ワンピース

□依存
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「危ねえ!」
誰だったか、声がした。
敵の海賊が狙いを定めたのは、ロビン。
「ロビン!!」
気づいたけれど、少し。
遅くて。



傷のついた腕にゆっくり手を伸ばして、――そこはチョッパーがきちんと手当てをしてあったけど、やはり痛々しいように見えて、――ほとんど表面に触れるか触れないかという加減で手を添えた。
「痛む、か?」
「いいえ、貴方が守ってくれたから。傷は浅くてすんだのよ」
だから、辛そうな顔をしないで、と。
自分がしたハズの心配を、逆にされてしまった。

ロビンは、人に心配をさせようとしない。
どれだけ傷ついても、平気そうな顔をするし、大丈夫か、と聞いたら大丈夫、と常に答える。
だから、余計に不安になる時があるんだ。

その感情からなのか、それとも別の――。
分からなかったけれど、俺はいつの間にかロビンを引き寄せて、抱きしめていた。
「……剣士さん?」
「悪ぃ。……守れなかったッ」
「あぁ、そんなに優しくしないで」
抱きしめる俺の耳に、消え入りそうな声が、聞こえた。
「は?」
「勘違い、してしまうわ」
その時初めて、目に見えて悲しそうな顔をした。
いつも笑っているくせに。にこにこと、何を考えているか分からない笑みをはりつけているくせに。
何を言ってるんだ、こいつは。
「剣士さん、お願い」
ぐ、と弱く体を押されて、ロビンから離される。

「優しくされたら、駄目なの。私は、弱いから――」
一度、俺の目をひどく淋しげに見て。
「貴方に、依存してしまう」
そう言うと、また目を伏せてしまった。

何を言えば正解なのか、馬鹿な俺には分からなかったから。とりあえず、今思うこと、言葉にしておこうと口を開く。
「それが、どうしたってんだ。それでお前が救われるなら、どれだけだって依存すればいい」
まだ少しだけ触れている肌から、ロビンのかすかな震えが伝わってくる。
「だって、私は貴方が好きなの。愛してる、のよ……?きっと、離れられないわ。それでも言える?」
「どうだろうとカンケーねえ。言ってやるよ、何度だって」
好きな女さえ支えられなくて、どうする。
泣きそうなロビンをもう一度抱きしめると、今度は抵抗は無かった。
「そもそも、誰が好きじゃねえ、っつった」
少し驚いた表情を見せたロビンは、まだ目を伏せたまま。
かすかに震えた声で呟いた。
「だって、……こんな私よ?今までどんなにひどい事……」
「それでも、今は!」
ロビンの言葉を遮ったら、やっと目が俺を向いた。
「俺たちの仲間だろうが。いい加減、素直に受け入れやがれ」
チッ、と舌打ちして、しっかりと抱き締めなおす。
「……おれがどんだけ好きだと思ってやがるんだ」
あぁ、我ながら恥ずかしい台詞を吐いたもんだ。

それでも、やっといつもの笑顔が見れたから、こんな言葉くらい、安いものだ。
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