ワンピース

□薬指に、光る
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きょろきょろと、何かを探しているのだろうゾロの目が忙しく動く。ぴたり、と止まったゾロの目は、探していた人物を捕らえた。
「ロビン」
名前を呼びかければ、相手の顔は素直にゾロの方に向けられる。言葉はなくとも、どうしたの、と聞こえてきそうな表情に、「話したいことがある」とだけ伝える。
そうすればロビンは、何かしら、と微笑みながらゾロに尋ねた。
ゾロは小さく手招きをして、
「……、もっと、」
近づけよ、と。声には出さなかったけれど、ロビンには伝わったらしい。ゆっくりと、その足はゾロの方に向かっていた。
ゆるり、とした仕草でゾロの近くに佇んだロビンの漆黒の髪を掴んで、その目を覗き込む。覗き込めば、何か知りたい事が分かるかのように、深く、長い間。
それでも、そんな事をしたって、ゾロにはロビンが何を考えているかなんて分かりやしなかった。当たり前と言えば当たり前なのだけれど、ゾロの方はロビンに覗き込まれると、何か自分の考えが読まれているんじゃないかという錯覚に陥ってしまう時があるのだから、同じ様にしてみれば謎の多いロビンの事も少し分かるんじゃないかと、思っていないことも無かったのだ。

「ゾロ、」
突然ゾロの耳に届いたロビンの声。びくり、とゾロの肩が少し跳ねた。
話があると言ったのにも拘わらず黙りこくっているゾロに、どうかしたのかと眉を寄せたロビンが、相手の代わりに口を開いたのだ。
「黙ってちゃ分からないわよ」
「あぁ、悪い」
そう言いつつ、やっとロビンの髪を手からするりと解く。

ゾロは言い辛そうに口をぱくぱくと無意味に動かして、しばらく黙ったかと思うと、やっと口を開く覚悟を決めたようで、
「ロビン」
と、目の前に佇むロビンの名前を静かに呼んだ。
「話っつーか、渡したいものがある、の方が正しいと思う」
ひとつひとつ、何かを確かめるようなゾロの言葉。そんな言葉を紡ぐゾロを、ロビンはただ見つめる。
「これ、」
取り出されたのは、小さなリング。
ゾロはロビンの細い指に触れて。
「受け取ってくれるか?」
と、呟くように言った。
驚きで目を見開いたロビンは、ぎこちなく、けれどはっきりと首を縦に振った。それを確認したゾロは、その指輪をするりとロビンの指に通す。

「今すぐってワケじゃねェけど」
自分の指にはまった指輪を見ながら、ロビンは、ゾロの言葉の続きを考える。
つまりは、そういう事でいいんだろうか。と思いながら、ゾロの顔を見れば、少し赤い。
そんな様子に、くすり、と笑みが漏れた。
「ええ、もちろん。ありがとう」
ゾロはその言葉を聞いて、ほっと胸をなでおろす。
それから、一粒だけの涙を流す、綺麗なロビンの瞳に。吸い込まれそうだと思いながら、ゆっくりと口付けを交わした。
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