ワンピース

□言わない言葉
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「ナミすわぁああん、今日も素敵ですねー!」
ハートマークを飛ばしつつ、私を何時もの通り褒めてくる、この船のコック。
「あらそう?知ってる、ありがとう」
ニッコリ可愛い笑顔をして、私はそれに応えてあげる。
そうすれば、サンジくんは目までハートにして、更に私に素敵な言葉を連ねてくれる。


いつだってサンジくんは、私に夢中。

「ところで、ねえサンジくん。私、喉が渇いたんだけど、」
「ハーイ!今すぐ飲み物お持ちしまぁす!」
ほんと、なんて便利な男の子。
即座に私の言葉に応え、キッチンへと姿を消した彼を見て、微笑む。素直過ぎて、可愛いったら。

ふと、背後からため息が聞こえた。
振り返ると、呆れたようなウソップの顔。
「あらなによその顔、なんか文句でもある?」
「いやぁ……おめェってやつは、ひでえ女だなあ、と」
「そう見えるの?どこが?」
「どこが、ってなぁ、」
歯切れの悪いウソップの言葉。
なんなのよ、と口では抗議しても本当は分かってるの。
サンジくんは、私が好きで、そしてそれを私が利用してるから、あんたは私をひどい女って言うのよね。
「サンジも大変なやつに惚れたなあ……」
大袈裟なため息と同時に呟かれたそれは、私の耳を通ったけれど、特に反応は返さない。だって、そんなものはずいぶんと前から分かり切っている事なんだから。
私だって、自覚くらいはしてるのよ?ただ、やめる気は無いけれど。
「あんたってば失礼ね。でも、概ね同意はしとくわ」
「タチわりぃの」

「ナミすわぁん!お待たせしましたー!」
サンジくんのハートマーク飛び交う声が聞こえたことで、私とウソップの会話は打ち切りとなる。
「ありがと、サンジくん」
「ナミさんのためでしたらこれくらい!」
「ほんと私のこと好きね」
「もちろん!」
全身で好きを表す彼に、私はただただ微笑む。

彼の欲しがっている言葉は、分かっている。
だけど、まだまだその言葉は、あげない。私も大好きだなんて、言わない。
私はズルイの。
でも、それが女ってものでしょ?

だから、私が貴方に好きと言いたくなるまで、私にたくさんの愛の言葉を頂戴ね。
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