忍たま

□見る者
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気にくわない侵入者がやってきた。
髪結いなんてものだったくせに、今更編入なんてしてきた、いつもへらへらとしているそいつ。本当に忍者になるつもりがあるのか。と言いたくなった。

――斉藤タカ丸。

あいつを見るたび苛々する。何故だか、無性に。


「何不機嫌な顔してんの、文次郎」
横を見ればいつの間にかそばにいた伊作が、ちょっとだけ心配そうな顔をしていた。
目だけを伊作の方に向けたまま、
「なんでも無い」
と嘘をつく。
わざわざ気に食わない、なんて話すことも無いと思った。――のだけど。
「嘘。……あの子?」
つぃ、と目線で確認したのは今まで俺が見ていた奴――つまりは、斉藤タカ丸。
なんでこいつ、こんな察しが良いんだ?なんて事を疑問に思いながらも、バレたものはしょうがないと正直に話す気になった。
「まぁ、な」
「ふーん。まあ、文次郎の気に入りそうな子じゃないよね」
冷静に分析しながら、目はまだ奴の方をじっと見ている。

「近いうちに辞めるだろ……あんな奴がついていけるほど、甘くない」
ふん、と鼻で笑う。いまだあいつから目を離さない伊作に目を向けると、伊作の方も俺を見てきて、……まるで全てを見透かすような目で、
「へえ、そう?」
含みがある笑いを湛えていた。
――どういう、意味だ?
聞こうかと思ったが、それもなんとなくはばかられて、顔をしかめるだけに終わる。
「そう思うなら、いいんじゃない。……本当はもう、分かってるんじゃないかと思うけどね」
伊作は俺の目を見つめて、意味ありげな言葉を付け加えた。
(なんだ……あいつ……)
じゃあね、と何事も無いように去っていく伊作を見ながら、俺はさらに険しい顔をしている事にしばらくして気付く。

ひとりになってもう一度だけ目線を戻すと、すでに斉藤タカ丸の姿はなくなっていた――。
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