忍たま

□見られる者
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俺を見ている人がいる事は知っていた。
いや、睨んでいるの方が正しいと思う。

俺より二つ上の学年――、六年い組・潮江文次郎。
二つ上の学年と言っても、俺は編入してきたから、年齢で考えれば同じだ。


その人から、睨まれている理由も知っている。
いや、想像だけれど。多分、正解。だって、見てたら分かるよね。とても分かりやすい。
あの人は俺が気に入らないみたいだ。俺は、そんなに嫌われるように事した覚えないんだけどなあ。
まあ、編入なんてした時点で気に食わない要因のひとつにもなっているんだろうと思う。あとはそうだなぁ、容姿、行動、どれも忍者に似つかわしくないと思っている事だろう。

ほら、今も俺のほうを睨んでいる。
腕を組んで、とても不機嫌そうな顔で。
そんな顔してて疲れない?と思うけれど、話しかけるなんて馬鹿な事はしない。
視線を感じながら、その元をゆっくり目だけ動かして見ると、丁度ひとり、その人に寄っていくのが見えた。
あれは――善法寺伊作くん、だっけ。
どうやら何か話しているみたいで、なんとなく耳をすませば、こちらまで聞こえてくる。
「近いうちに辞めるだろ……あんな奴がついていけるほど、甘くない」
「へえ、そう?」
少し遠かったけれど、文次郎くん達の会話は聞こえた。耳は良い方。
ひどいなあ、そんな大きさで話されたら聞こえちゃうよ。聞かれても問題ないってこと?
あぁそれとも、わざと聞かせてるの?
それだったらたちが悪いね。

くすり、と誰にも分からないくらい、小さく笑って。

「タカ丸さーん?」
俺を呼ぶ声がしたから、「はぁい、今行くよ」と元気良く返事を返して、声のする方へ駆け出した。
同級生の、自分より幾分か小さな背中が見える。
「ごめんね、待っててくれてありがとう」
今度は大きく微笑んで。
再び俺は、歩き出した。


確かに、自分は今まで――ここに来る前までは――まったく違う生活をしていたけれど、それで俺の何が判断出来ると言うの。

侮らないで貰いたいな。
こんなに興味を持ったのは、自分でも驚いたんだよ。だから、絶対続けてみせる。自信はあるよ。
興味抱いたものへの執着は、すごいんだから。
俺の根性、甘くみないでよね。

“あんな奴”が何処までいけるか見てて?
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