忍たま

□落ちて
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(落ちたかな)
叫び声が、聞こえた気がした。


「タカ丸さん」
まだ新しいその穴の中に、落ちていたのは同級生。――年上、の。

穴を覗き込めば、苦痛に少しだけ顔を歪めるタカ丸さんがようやく起き上がろうとしているところ。
この人も、多いなぁ。
タカ丸さんが穴に落ちている様子を、もう何度見たことだろう。この光景にも、ずいぶん慣れてしまったものだ。
記憶の中と現状を比べて、ふう、と息をついた。
「手、かしてください」
「いっつもごめんねぇ」
申し訳なさそうに、へらへらと笑ってタカ丸さんは私に手を伸ばす。
――自覚は、あるみたいだ。

ぐいっ、と穴の上からひっぱりあげながら、思い起こすのは学園内で穴に落ちた人たち。
タカ丸さんも多いと思ったけど――でも、まあ一番落ちてるのは不運委員長か……。あの人は最早わざとなんじゃないだろうか、とも思う。

地上に出たタカ丸さんは、汚れた箇所をぱんぱん、と払って再び私の方に笑顔を向ける。
「ありがとっ」
この人が落ちるたび手をかして、でもそれは特に大変でも無くて――。経験が少なくても、タカ丸さんだって一応忍者のタマゴ。それなりに訓練も受けているし身軽だ。手をかすと言ったって、自分の力で全て引きあげているわけではないのだから。
むしろ、手を差し出すのはそれを理由に触れる為、なんて言っても良いかもしれない。

穴堀りは楽しい。
だけれど、最近楽しみが加わったから、穴を掘る手にも力が入るというものだ。
落ちる人と、触れる手、お礼の言葉と暖かい笑顔。

また、落ちてくれないかな。
そんな事を思う。


でも多分、近いうちにまた、穴の中に手を伸ばすことになるだろうから、

「わぁああっ!?」

あれ?
もう落ちた、かな――?
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