ヤンキー君とメガネちゃん

□3月14日
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今日を迎えるに当たって、さんざん悩んだ。
この一ヶ月というもの、ほぼこの事しか頭になかったんじゃないかというくらい。

3月14日。

「3月14日は三倍でお返しをする日ですので!」
チョコを貰ったあの日から、一ヶ月だ。今日はホワイトデー。


「あー、ちくしょう・・・」
結局、一睡も出来てねえ。
がしがしと頭をかきながら、自分のベットに座ったまま横の机を見る。そこにはラッピングされた可愛い箱。およそ品川に似つかわしくない。
「・・・なんであるんだよっ!」
それは昨日品川が買ったからだろう。当たり前なのだが。
今日、この日になるにつれ、ひどく混乱していった頭ではワケの分からない言葉を口走ってしまっても仕方ないことだった。
たかだか小遣いの数分の一程度の金で買ったものが、こうも自分を苦しめるとは。もちろん、金銭的な意味ではまったくなく。
後ろについてくる迷いがあっての事なのだ。
品川は己の目の前にある、可愛く飾り付けられた箱をみながらう゛ーと唸り、いかにその迷いが重いかを知った。

「あーー足立のやつっ、これ渡せってのかよ!お、俺が!!」
まだ花の顔すら見ていないのに品川の顔はこの時点で真っ赤。

時計を見ると、すでに学校の時間。もう一度低く唸ってから、振り切るように立ち上がると、目の前の可愛い箱を乱暴にひったくり、カバンの中に押し込んだ。

「ちくしょー、もう知らねえからな!」
誰に対して言っているのか分からないが、家を出ながら叫び、重い足を無理やり早足で歩かせて学校に向かった。
学校に向かう間も、悩みはどうやって“アレ”を渡そうか、という一点のみ。それだけに全ての考えを傾かせて、このまま学校に着かなければ良いのに、と願った。
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