ヤンキー君とメガネちゃん

□思い出すのはあの人
1ページ/2ページ

もう駄目だ。
ここ最近の自分の行動の愚かさを、遅いながら今後悔していた。
怒り狂った眼前の男、自分たちが依頼をした、水戸という人間。自分達の全てはここで終わるのだ、と顔から血の気がひいた、その瞬間に、ありえないものを見た。

宙に舞う少女と、とんでいく目の前の男。
ズシャアァ、と派手な音がしたかと思うと、地面には転がった水戸の姿。倒した相手はというと、メガネをくい、とあげているところだった。
見れば紋白高校の――、

足立花。


「大丈夫ですか?」
かけられた一声は、俺たちの心配をしたもの。ひどいことをした、と自分でも少なからず思う、から怒鳴るくらいの事をしてもいいのに。その声は、心からの心配で、驚かされてしまった。
眉根を寄せて、俺の顔をのぞきこむ。
その顔かたちは、なかなかに綺麗だ。整えられていると思う。
そしてメガネでみつあみの、典型的真面目な子、な様子をしているのに……、とさっきの蹴りを思い出す。人は見た目によらない。……あぁ、それはうちの生徒会長もだったか。考えて、会長の恐怖に少しだけ顔を歪ませる。

「佐野君……でしたよね。もう、こんな事は、しないでくださいね」
お願いします、と紡がれる言葉。ものすごく、罪悪感。他の人より余計に、この人に言われると。
……何でだろうか。物凄く、胸が痛んだんだ。

品川大地に、邪魔をするな、二度と、と言われた。
それだけで、許す、と。本当に、それだけですんだことには、正直驚き以外の感情があまり感じられないほど、びっくりした。だって、自分たちは陥れたのだ。我が学校の為に、隣の学校の、生徒会役員を。
物凄く驚いたけど、本当にそれだけのようで、もういい、と開放されると思ったら
「待ってください!!!」
あの、足立花の声。聞いていれば品川大地の事。必死になって、どうにかならないかと叫んでいるのだ。
ひとりの人に対して、こんなにも必死になっている足立花が、なんだか――。
見ていると、ほんのちょっと、嫌な気持ちになった。なんでだろう、と考えて……自分が短時間で、こんなにも足立花に対して好感を持っていたのだ、と気づいてしまった。
なんという事なんだろう。
ふう、と知らずため息がこぼれる。だって、これから会うことなんて無いに等しいのに。なんて、虚しくなる感情を抱いてしまったんだろう。


また、会える機会はあるのだろうか。
願わずには、いられない。もう一度の、再開を。

会長のキレる顔を見て、恐怖に身をすくめながら、それでも思い出したのは、あの人の事だった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ