デスノート

□みんなだいきらい
1ページ/2ページ


訪問者の音。
二アは自分の手の先にある指人形から目を離して、近づいてくる足音に耳を澄ませた。
「入るよ」
「どうぞ」

部屋のドアが開く音と同時、背中を向けたまま二アは口を開く。
「よく来てくれましたね、マット」
「まぁ、二アからのお誘いですから」
にっこりと微笑むマット。
振り返ってその顔を無言で見つめ、
「どうぞお座りください」
指差したソファーを、マットは「ああいいよ、すぐ終わるでしょ」と言って、ニアの勧めを拒んだ。

果たして自分は正しかったのだろうか。ニアはそんな考えを頭に過ぎらせながら
「……それで、」
話を切り出す。
「はいはい、なんでしょ?」
「何故マットを呼んだのか、ですが」
「うん」
「協力して欲しい事があります」
ニアがはっきりと、睨むような目をして言った。
「ん〜〜」
手を頭の後ろに回す。考え込む“振り”をしたマットが
「あんまり、メロの不利益になることはしたくないんだけど」
困ったな、と分かりやすくそんな声を出す。
けれど、そんなのは演技だと知っていた。
この程度の話を持ちかけたところで、マットは悩んだりしない。ニアはその事をよく知っている。

「マットは、そんなにメロが好きなんですか」
唸るマットにニアが問う。
「は、そんなわけないじゃん」
即答。それは想像よりも遥か早く、そして予期せぬ答え。
マットの言葉に少しばかり二アは動揺したように目を開いた。
「俺はメロが嫌いだよ」
ならば何故、と普段感情の読み取れないニアの顔に、そんな文字が浮かんだように見えた。
それだから、それを言葉にする前に、マットは「でもね俺の中でメロは結構上の位置にいるんだあ」と吐き捨てて置く。

「意味、分かる?――分かるよね、ニアだもんね」
ニアが応える前に自己完結させて、マットはポケットからひしゃげた煙草の箱を取り出した。その中の、これまたくしゃくしゃになった煙草を一本取って、少し伸ばす。
それから、くわえたソレに火をつけた。

その煙草が縮んでいくのを待っているかのように、二人は無言で視線を交わす。
口から短くなった煙草をとった代わりに、
「俺はメロが嫌い」
マットはそんな言葉を呟いた。
「でも、二アはもっと嫌い」
嗚呼そうだ。この人はそういう人だ。
柔らかい笑みを浮かべたマットに、ニアは妙に納得する。
マットは“ひとのすべて”が嫌いであるのだ。

「だから、協力してあげる」
接続詞がおかしい。
がらにもなく、意味の無い事を思う。
「だけど、何時止めるかは勝手に決める。俺は知らない」
それを宣言したマットは、ひどく虚無な目で、
「ゲームは面白くなきゃ駄目だから、途中で飽きたら、ゲームオーバー」

「、だよ」
そう言った後のマットは、ひどく嬉しそうに笑っていた。

(嗚呼何かが、迫る音がする)

(それは、)
(破滅か救いか)
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ