犬夜叉

□欠けた花
2ページ/4ページ


殺生丸は、いつものように表情の読めない顔で、手のひらの中の花を見ていた。
ふいに、その手をぐっと握ってみる。手の間から、一枚。花びらが落ちた。
「脆いな」
手をひらくと、そこには一枚花びらが欠けた花。
「本当に脆い」
だからこそ、美しいのかもしれない。
――まるで、人間のようだ。

そこで、ふと、殺生丸は今までの表情の読めなかった顔と変わり、明らかに不機嫌に眉をひそめた。
「私は、人間を美しいとでも思っているのか……?」
ぼそりと、口からこぼれたのは動揺した声だった。
「違う」
今思った事を絶対的に否定しなければいけないかのように、突然口調を荒げる。
――人間など、すぐに死んでしまう下等な生き物だと。卑しいものと。人を母に持つ犬夜叉(我が弟)を恥だと。思ってきたんじゃないのか?見下してきただろう?――

「何故だ」

――りんに、出会ってから?

再び、殺生丸は手の中の、一つ花びらの欠けた花に目を落とす。しばらくその花を見ていたが、ふ、と顔をあげた。
「殺生丸様ぁ〜!」
姿は見えないが、森のほうからりんの声。
「ぎゃーっ!待てりんっっ!!殺生丸様ただいまこの邪見もどりまする〜〜っ」
邪見の情けない声も聞こえる。しばらく待つと、二人の姿が現れた。

「殺生丸様ただいまー」
いつもの笑顔のりん。
の、ハズ。
だが――何故か感じる違和感。何だ、これは。
「申し訳ございません殺生丸様!りんのやつが遅くなり……!」
「えーあたしー?」
ぎゃんぎゃんと始まりかけたりんと邪見のやりとりを、殺生丸は顔をしかめて
「うるさい」
と一蹴した。
「ははっ、申し訳ございませんっ」
すぐに邪見はぺこぺこと頭を下げて謝った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ