ネウロ

□皆大好き、桂木弥子
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何処行くの、笹塚さん。
かけられたのは、匪口の声だった。

「何処、……って弥子ちゃんと、その助手んトコ」
えーー!と盛大に匪口が文句をたれた。
うるさい、そんなにあの子が好きなのか。まあ、俺も好きだけどね。ん?女子高生相手に、犯罪か、これ?
気にしちゃ無いけど。
「前の事件の事、聞きに行くだけだよ」
いい口実が出来たな、とは思っているけど。

俺も桂木に会いたいんだけど、ってボソッと言った匪口の声が聞こえたけど。
「お前はまだ仕事があるだろう!」
笛吹が都合よく邪魔してくれたから内心喜びながら「行ってくるわ」と声をかけて、桂木探偵事務所に向かう為、扉に手をかける。
「はやく帰ってこいよ」
扉を閉める最後に、笛吹の声が聞こえた。
そんなに心配ですか。大丈夫だよ、手出したりしないから。
まだ、ね。



「先生に何か御用ですか?」
「…………」
黒いオーラが、ヤコに手を出したら分かっているな?と伝えてくる。
桂木探偵事務所に入った瞬間、この男のドアップだ。ちょっと勘弁して欲しい。
どうせなら弥子ちゃんが良かったな……。口に出したら殺されるだろうけど。
「何って前の事件の事、弥子ちゃんに聞きに来ただけだけど」
何か文句ある?とつけ加えようかと思ったけど、無駄な怒りを買うのはごめんだ、やめておく。

「こんにちは、笹塚さん」
目の前の助手と名のる男とは正反対の、可愛らしい弥子ちゃんの声。
これだけで、癒される。
うん、やっぱ諦めねーよ。ライバル多いけど。

そんな事を考えていたとき、後ろの扉がばたーん、と開き。
「やっほー桂木っ!会いにきたよ!」
でっかい声と一緒に匪口が姿を現した。
「匪口……仕事はどうした」
「終わった☆」
ばちん、と片目をわざとらしく瞑って、テンション高めの匪口の声。
「まったく、あれだけ早く終わらせる事が出来るなら普段からやってもらいたいものだ」
何故かついてきた笛吹が憤慨しながら匪口を小突いた。
「だって桂木に会う為だもーん。早くしないと笹塚さん、帰ってきちゃうしね」
ああこいつ、弥子ちゃん大好きなの、隠すどころか前面に押し出してくるから、タチが悪い。

「桂木さ、今度デートしようぜ」
軽いノリで弥子ちゃんの肩に手をかける匪口にイラッとした。
あ、どうやら残り二人もそのようで。ネウロは笑顔が怖いし、笛吹はぴき、と血管がきれそうな音。
「え、あの」
「弥子ちゃん困ってるだろ」
「匪口ぃ、手を退けんか!」
ぐいっ、と俺と笛吹が弥子ちゃんと匪口の間に入って、匪口を睨みつける。すると、邪魔しないでくれる?、なんてボソッと呟いて、相手もやっぱり俺たちを睨みつけてきた。
そんな俺たちを、助手が押しのけて同時に弥子ちゃんの襟首をつかみ、「死ぬ死ぬ死ぬ、ネウロ、死ぬ!」って言ってる弥子ちゃんなんかお構い無しで。
ニッコリ俺たちに笑顔を向ける。
「先生はそんな時間はありませんので!事件で急がしいんですよ、残念ながら、“大抵は我が輩と一緒だ”」
何か最後の方、かなり、黒い笑顔だった気がする。

「それでは、事件について先生に聞くのでしたら、早めにすませて下さいますか?」
にっこり。黒い笑顔のままネウロが牽制をかけてくる。

それとも、我が輩が忘れられなくなるまで、みっっっちりと教え込んでやろうか?

声は出していないはずなのに、おれたち三人には、ネウロのそんな声が聞こえてきた(気がする)

何を教え込まれるんだ、何を。
「や、弥子ちゃん、早めにすまそうか」
「え、はい」

それから真面目すぎる位にちゃんと事件の話を聞いて、完璧な書類をつくりました。


(恐ろしい敵がいたもんだ……)
うん、でも、まだ諦めては無いよ?
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