ネウロ

□魔人様の采配
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「ちょっと!」
事務所に探偵の声が響く。自分に振るわれる暴力への抗議の声。日常と化した光景だ。
探偵はいつもこの力業で何もかもを許容させられている。
しかし、たとえ暴力で従わされているにしても、それでもやっぱり探偵は“コイツ”に協力的だし、……好意的であると俺は思う。
探偵はこのバケモノが好きなんじゃないか、といつの間にやらロープで縛り上げられるそいつを見ながら、思った。

「いたいいたい痛いって、ネウロ!」
……さすがにマズイ感じはする。ロープが探偵の首に食い込んで、そろそろ本気で絞まりそうだ。
「おい、やめてやれよ」
ぽつりとそう言ったら、ロープを握ってたバケモノがぐりん、と俺の方を向いて、ニヤッと凶悪な顔で笑った。
「ほほぅ貴様、我が輩のやる事に口出しをするか?」
これで「する」と言ったら後が怖い気がするので、
「や、そういうわけじゃねえけど……」
と、曖昧に言葉を濁しながら、目を逸らす。
そうしたら、探偵の叫び声が響いた。
「ィヤァアアア!頑張って吾代さんッ!ネウロに負けないでぇ、私を助けてええ!!」
必死な形相で俺に助けを請う探偵の様子を見ながら、虐待している悪魔は心底楽しそうに笑っていた。

「あー……俺、帰るわ」
なんつーか、俺の目が相当おかしいんだろうが、ただじゃれてるようにしか見えないというか。
いっつもなら、可哀想だと思うのに。もしかして探偵はコイツの事が好きなんじゃないか、って思っただけで。
こんな風に考えてしまうようになるなんて、な。
俺はそうとう単純な頭なんだな。

「えぇええッ!?吾代さん助けてくれないの!?」
俺が何の行動する様子もなく帰ると言ったら、探偵は目に涙を浮かべて訴えた。
「まったくだ。仲間のピンチに助ける行動もおこさんとは」
心底呆れたような悪魔が素早い行動で俺の肩を掴む。
(ぇええええ、理不尽!?しかもそのピンチつくってンのてめぇじゃねえか!?って、おいコラ、縛ってんじゃねぇええっ!!)

「ふん、本当に無能な下僕どもだ。お前らはそろってそうしてるのがお似合いだな」
にやりと笑う顔が楽しんでるようにしか見えない。
「それでは我が輩、用事を思い出したので少しばかり行ってくるとしよう」
「え゛」
「このままかよ!?」
そんな俺たちの抗議は無視し、ドS魔人はその場を去った。
「ちょっと待てぇぇええ、ってもう行きやがったーーっ!!」
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