お題一

□嘘吐きな15題
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11:こういう人間なんだ



「匪口さん!」
君が渡してきた、ひとつのグラス。綺麗な、透明な、それ。
プレゼントです、と微笑んだ。

それを受け取って――、
俺は手を離して、

壊した。


ガシャァアアン――。
大きな音が響く。グラスが割れた音。
「匪口さん・・・?なん、で」
力なくつぶやく君に。
「なんで、って・・・決まってるだろ?」
分かるだろ、と俺は目の前で突っ立っている彼女の目を見た。
「桂木が悪いんだよ?」
座ったイスがギシッ、と音をたてる。
「わ、私は・・・」
「私は、何?」
俺は自分でも怖いくらい、冷たい声が出たことに驚いた。
「・・・っ、」
ああホラ、桂木も怖がってる。でも、
「誰、“あの”男」
冷たい声は変わらない。
どうしようも無いほど、俺の中の黒い何かが、冷たい何かが、桂木を見てる。
「あれは・・・っ、クラスの友達、で・・・」
「桂木は友達に抱きつくの?」
「違、、違うの・・・!」
必死に、すがりつくような目で、君は俺を見る。
俺はその目にどう答えたらいい?君が望むようには答えられない。
「違う?違うってどう?事実、抱きついてた」
「あれ、は・・・っ!わ、私が悪いの!転ん、で・・・ッ!転んだからっ」
叫ぶように。声を絞り出して。

俺は桂木から視線を外して、イスを立った。イスがまた、ギシッ、となった。
「違うかどうかなんて、どうでもイイんだよね」
「匪、・・・口さ・・・ん?」
俺を見上げる君は、泣きそうな顔。そんな顔、見たいんじゃないのに。

「桂木はさ、」
近づく。
「俺をさ・・・、」
近づく。
「どう、思ってんの?」
近づく。
「もっと優しいやつだと思ってた?」
「ひ、・・・ぐ、ちさ・・・」
目の前に立てば、今にもくずれそうな君。
ああ、俺がこんな顔、させてんのか。
「俺はいつもへラヘラ笑ってるから、怒ることなんかないとか思ってた?」
「違う、違うよ。匪口さん・・・」
俺の中の黒い何か、冷たい何か、それがだんだん大きくなっていく――。
それが桂木を追い詰めてる。俺が桂木を追い詰めてる。・・・知ってる。
けど、
「桂木。桂木が悪いんだよ・・・?」

嘘だ、違う。

ドンッ!!
壁に桂木を追い詰めて、上から君の顔を見た。目には、涙がたまってる。
違う違う違う、俺はこんな事がしたいんじゃない。
なのに、グルグル渦巻く思いが止まらなくて。
「ごめ、んなさい・・・っ」
部屋を出て行く君は、泣いていた。

出て行く君を目で追いながら、俺は壁に背を向けた。
力が抜ける。
ズルズル、ともたれた壁を落ちていく。


足元に散らばるのは、
壊れたグラス。

嗚呼、俺も壊れた。
それからきっと、君との関係も、


壊したのは、俺だ。
でも、俺はこういう人間なんだ。

「ごめん・・・」
伝わらない言葉を、君に。





* * *
何か『嘘吐きな15題』なのに、嘘とか一言しかない・・・(汗)
あっれー?オカシイな・・・。嘘がテーマなハズなのに、ただ題名使っただけになっちゃった・・・。お題の意味ねぇ!!
コレ匪口さんタダの病んだ人、っつーか(言葉の)バイオレンスな方じゃないか・・・!本当ごめんなさい!!!!
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