お題一

□嘘吐きな15題
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13:逢いたくなかったよ



「逢いたく、なかったよ」

逢いたくなかったよ、
こんなに苦しいのなら。


「嘘つき」
私が言った言葉に、目の前の人は、ただぽつりと。まるで全て分かっているかのように応えた。
「・・・っ!!」
何で分かるの。
「カオにかいてあるもん」
そうでしょ?と、笑うその人。
ほら、又。私の心、読めるの。

ホントは逢えて良かった。貴方と逢えて、私は・・・――

だけど。


「ちがう、逢いたくなかった!!匪口さんになんか・・・!!」
精一杯の強がり。
絶対
涙なんか流さない。

「そ、っか」
そんな顔、しないで。匪口さん。

心が、

ズキン
と、痛む。



匪口さんの顔が、私の方を向く。
貴方の目が、

私を捕らえた。
「でも、俺は桂木に逢えて良かった。・・・好きだ、桂木」

「・・・っあ」
匪口さんから、目が離せない。
視線が、私の中の黒い気持ちを見透かしてる。



「ズルイ。ズルイよ・・・」

そんなんじゃ、嫌い、って言えない。
涙なんか流さないなんて、無理。



嘘だよ、嘘、精一杯の嘘。
だけどやっぱり、嘘じゃないんだよ、こんな思い、逢わなければしなかったのに。
でもきっと、それ以上に。出逢えて感じた想いが、何より大きくて。

分からないよ、ねえ匪口さん。

矛盾する思いが、私の思考を奪っていくから。





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