お題一
□嘘吐きな１５題
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01：もう、忘れた
あの時、
あの場所でした約束。
貴方は覚えてる？
ねえ、匪口さん。
ああ、沈黙が重い。
「桂木、」
「・・・な、に・・・」
「別れよ」
「――――ッ」
そんな言葉、聞きたくなかった。これなら、重い沈黙の方が、良かった。
「なん、・・・」
「ごめん、俺もう無理」
「私の事、き、嫌いなんですか・・・っ」
嫌いじゃない。そんなわけない。大好きだ。愛してる。
でも。
これ以上いたら、
俺は、君を縛り付ける。
俺は、君を離せない。
俺は、君を奪ってしまう。
君の何もかもを、
壊してしまう・・・。
「匪、口さ、ん・・・！」
何がなんだか、分からない。視界がかすむ。意識が保てない。
「桂木、ごめ、ん・・・」
泣いてる桂木。
でも、今のままでいたら、もっと泣かせてしまう。
だから――
「サヨナラ」
「あの、約束・・・！守、ってくれない、ん、ですか・・・？」
君に言った、
“あの約束”
覚えてる。けれど、
『ずっと傍に居る』
「―――ッ、」
「匪口、さん・・・っ！」
「――忘れ、た・・・」
笑った、
思い出が、
色あせてく――
最後の。
「もう、忘れた」
最後の、
大きな嘘。
＊ ＊ ＊