お題一
□嘘吐きな15題
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02:欲しくない
「桂木の、一番欲しいものあげよっか?」
唐突に匪口さんが言った。
ぽかん、としている間に。匪口さんが屈んで私の目を見つめる。
「え?」
遅すぎる反応をした私に、匪口さんは笑った。
「桂木の頭、理解するまでにどんだけかかんの」
それはもう、楽しそうに。
「え、は、え?」
こっちはわけが分からないと言うのに。このひとはひとりだけで思う存分楽しんでる気がする。
「なん、なんですか?急に」
やっと言葉を搾り出したと言うのに、
「だからね、桂木。おまえの一番欲しいものって、アレでしょ」
私の言葉は思いっきりスルー。
楽しげな笑みを湛えたまま、
「俺の愛」
にんまりと笑った匪口さんの顔が妙に憎らしくなって。
“欲しくない”
私は、嘘をつきました。
「あはは、桂木ってばうそつきー」
「っ!!なんなんですかっ」
「俺にはお見通しだからね?」
「・・・じゃあっ、・・・そんな事言う前に下さいよ」
「いやあ、それは面白くないかと思って」
「匪口さんのS!!」
* * *
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