お題一

□寄せ集め的散文お題
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02:足りなかったんじゃない、欠けていただけ



「欲しいな、って思った」

匪口が呟いた。

「だから壊したいな、って思った」

ねえ、それは変かな?
なんて。
自分とは違う純粋な目で聞いてくるものだから、笹塚は一度目を瞬き、どう答えたものかと眠気の残る頭で考えた。
変なんだろう、ときっとこいつは多少なりとも自覚しているのだ。けれども自分の心は変だと感じていないから、疑問になるのだ。

(変、か)
そうではなくて。
「んー、」
纏まんねえな、――眠い。


なんつー、か。
「足りねぇ、んだな」
(何が?)
そうだな、
(愛が?)
それとも、

自分の言った言葉の答えをハッキリと決められないまま、笹塚はゆっくりと息を吐いた。


ふいに、自嘲したような匪口の言葉が降りてくる。
「足りないんじゃないよ、欠けてるんだ」
俺は人間の出来損ない。
未だオトナになれないコドモがそう言って笑うから、(言った当の本人はもう自分の発した言葉に興味は無いようだったけれど)こちらとしては、何故だか痛々しく感じてしまうのだ。

匪口、と声をかけようとして、笹塚は繋ぐ言葉を見つけられず、その名を呼ぶことを諦めた。





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111224
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