お題一
□片想いをする男
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泣いてすがり付いてきたそいつを、俺は本当の笑顔に戻すなんて事が、できなかった。
だって、あいつが笑顔になるには、
「あー?またケンカでもしたのか?本当よく飽きねえな、お前ら」
ため息をついて、ぽん、と頭に手をやる。
泣きはらした、目。
ぽつりと。無意識に言葉が出た。
「あんな奴やめちまえ」
俺なら絶対、悲しませないのに。
「吾代さんの方が、良かったのかなぁ」
嘘つくな。
こんなに泣いてるのも、悲しいのも、あいつだからなんだろ。俺だって、分かってるんだ。
それに。お前を本気で喜ばせるのも、悔しいけれどアイツしかいない。
電話。
ああ、ほら顔が違う。
今まで泣いていた顔が、もう笑顔。
――あの笑顔は、俺には向けられない。
“俺なら悲しませない”
そう言ったって、
笑顔にさせるのは、結局のところいつもアイツ。
* * *
やっぱり弥←吾好き。