お題一

□片想いをする男
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俺のことなんか、微塵も見てないって、知っていた。
散々思い知っていたはずなのに。

「好きだ。探偵」

こんな言葉。
口にするなんて思っていなかった。
しようと思ってなんかいなかった。
言う気なんて、なかった、のに。

それなのに。
「お前が、好きだ」


発した言葉は、戻せない。
俺の口から洩れた振動が、探偵の鼓膜に響く。
考えてもみなかった言葉だったんだろう。目を見開いた探偵の表情が、物語っている。

(ああ、言ってしまった)


ごめん。
こんな言葉、お前に伝えてごめん。
応援なんて出来なくて、ごめん。

「好きになって、ごめんな」





* * *
120204
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