ワンピース

□貴女以外何もいらない
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女子の悪口って、エグイなあって思う。


でもまあ、別に。
自分だって、言う時はあるし。その場に合わせたほうが楽だし、面倒くさくない。

多少の悪口は、ストレス解消なんだろうと思う。
その人の、好きなとこも、嫌いなとこも、あるんだから。ただ、嫌いなとこの方が外に出ちゃうだけ。
そうなんだよね、って納得してた。
大概の悪口は、知らないふりで生きてきた。
だってその方が得だもん。首突っ込んで、自分が標的にされるなんて、面倒くさい。
って、思ってたのに。

「……何してんだろ」

悪口が聞こえた。
また何時もの『知らないふり』をしようと決めてた。
なのに、
「何これ」

周りを見れば、そばにあった机が倒れて、ナカミは散乱。
悪口を言っていた女子は、私を遠巻きに見てる。
それはそうだ。だって私が机を蹴り飛ばしたのだから。
「ナ、ミ?」
友人(と“いう事になって”いる子)が、小さな声で私を呼んだ。
「どうしたの?」
おそるおそる、私に向かって尋ねてくるその子の顔を見ながら、私が聞きたいよ、と思った。
「話してたら、いきなり机蹴るから……びっくりしたよ」
と、もう一人の友達(なんだろうか?)も、口を開いた。

「何、話してたっけ」
なんでこんなに苛々してるんだろう。
「何、って普通に、世間話?だった、よね」
「うん。友達の話とか」
――友達?
「しばらく話してて、あっ!そう、ロビンの話してたんだよね、そしたら」
ちらりと二人の友人の目が、私を向いた。
ロビンの話――そう、話という名の『悪口』だった。それを聞いた、から?

周りをぐるり、と見渡す。
散らばった机のなかみ。
相当強く蹴ったんだな、コレ。
「ああ、そっか」
(そんなに、私は)
「あの子のこと、好きなのか」
ぽそ、と呟いたのは、きっと聞こえていないと思う。
二人は私を不審な目で見つめていた。
「…………」
ああ、馬鹿らしい。

「ごめん、あんた達、むかつく」
ズバッと笑顔で言い放ってやったら、ぽかんとした表情が帰ってきた。
何その顔。馬鹿みたい。
「あんたらが自分可愛いのかなんなのか知らないけど、人の悪口言ってんの、別に気にしちゃいなかったんだよね。現に今まで、何もあんたらに言った事無かったし。本当に気にもしてなかったのよ」
それから、一呼吸おいて。
「でもね、ロビンは別。あの子の事は、許さない」
相手が二人とも、何か口を開きかけていたけれど、睨みつけてやったらあっさり口を閉じた。
意気地の無い奴。

「ロビンの悪口は、例えあなた達がどんなにクズだろうと、あなた達が言った事なんてロビンはカケラも気にしないだろうけど、それでも!」
びくっと、肩をすくめた二人に、低い声で呟く。
「私がムカつくの。だから、許さない」
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