忍たま

□可愛い子
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あいつは、とても可愛いと思うのだ。


「四郎兵衛」
名前を呼べば、すぐに私の方に寄って来る小さな後輩。
「どうしたんですか?滝夜叉丸先輩」
きょとん、とした顔で。
窺うように私の目を見る。
「疲れちゃいましたか?」
七松先輩に振り回されて疲れているのは自分だろうに。
まだ、二年だ。
それでも、一年の金吾はまだ頼りないし、三年の三之助は勝手にどこかへ行くし。だから、と自分が気遣う役に回るのだ。
本来なら自分が言われるはずの言葉を、私にかけてくる。
私は四年生だというのに。それでも心配してくる四郎兵衛。
ああ、そんなに泥だらけになって、ふらふらじゃないか。
「お前こそ、疲れてないか?」
頬についた泥を右手で拭ってやれば、
「ぅむっ」
可愛い声を出して、照れたように、大丈夫です、と言った。


あぁ、やっぱり、可愛いと、思うのだ。

「四郎兵衛」
ふわ、とその小さな体を抱く。
「えぇえ!?」
びっくりして、あわわ、と焦る四郎兵衛を、抱いたまま立ち上がる。
「滝夜叉、丸、せんぱ、」
「四郎兵衛はよく頑張っているな、褒美にこのまま抱っこして帰ってやるぞ」
「え、あぅ、そんな……っ」
おろおろしている四郎兵衛に笑いかけて。
「たまには甘えておくのも良いだろう?」
と耳元で囁いたら、
「ありがとう、ございます」
照れた真っ赤な顔と、小さな声でお礼が返って来た。

「七松先輩はもう見えなくなってしまったな、急ぐぞ」
ぽん、と四郎兵衛の頭に手をのせて、一度撫でる。
「しっかり掴まっておけよ」
「は、はいっ」
四郎兵衛のその声を合図に、私は忍術学園に向けて、走り出した。
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