忍たま

□目眩がする
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遠くで、どんどーん、なんて大声がする。
こんな声をあげるのは、
「七松先輩、」
しか、いないよなあ。


しばらくしたら、体育委員会たちのボロボロな姿が見えた。
そのなかの、同級生に駆け寄る。
「三之助!ぼろぼろだな、お前」
「作兵衛……」
三之助は俺を見て、だって七松先輩山いくつ超えたと思う?と、ぐったりしながら訴えた。
「おう……お疲れ……」
「もう、寝る」
ふらふらと歩を進める三之助。
「お前部屋行くまでに迷うだろう、俺が、」
と、そこまで言ったところで、
「おい、三之助。そっちはお前の部屋じゃない」
滝夜叉丸先輩の声で、俺の声はかき消えた。
「ほら、四郎兵衛も、金吾も。行くぞ」
三之助の襟を掴みながら、下級生二人を手招きする滝夜叉丸先輩。
どうしよう、三之助を連れて帰ろうと思って、ついでに待っていたのだけど。連れて行かれてしまったら、俺は何の為にここに居たのか分からない。

「富松、だっけ」
びく、と背後からのイキナリの声に驚いて振り返れば、そこには七松先輩。
「三之助を待ってたのか?」
泥をつけた顔で、にかっ、と満面の笑顔。
「え、と……はい」
だけど滝夜叉丸先輩が連れて行ってくれたから、結局自分は何も出来なくって、ちょっと恥ずかしい。
「そうか、富松は友達思いなんだなあ」
「え?」
間抜けな声を出したら、次の瞬間には、良い子だなー、とぐりぐりと地面に押し付けられるように頭を撫で回された。
「ぇ、あれ、う、え?」
何だこれ。
何をされているのかよく分からなくて、少しパニック。目の前がぐらぐら揺れている。

「よし、私も部屋に戻るとするかな」
ぐりぐり頭を回されていたのを、ぱっ、といきなり離すから、くらっと目眩。
「じゃーな、富松」
最後まで、笑顔。
目眩、目眩。
まだ、目眩――。

何でだろう、七松先輩の背中が見えなくなるまで、俺の目眩はおさまらなかった。

「これから、」
どうしよう。
貴方に会うたび、目眩がしそう。
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