忍たま

□ただひとり、貴方が
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みなは私を、高飛車だとか、自信過剰だ、とか、自惚れだとか、言った。

何故そんな事を言われるのか、分からない。
高飛車では無い、自信過剰では無い、自惚れでは無い。私は成績だって良いし、それだけの実力を持っている。自分の力を素直に認めているだけだ。
それの、何が悪いと言うのだ。

それでも周りはそれを言い続けるし、人は離れていくばかりだった。
私に悪いところなど、あるはずが無いというのに。

私のこの状況は、「友達がいない」という事なのだろう。

こんなに私は戦輪がうまいのに、誰一人教えてくれとは言わないし、成績だって抜群に良いのに、試験が近づいても頼ってくる奴もいなかった。



「滝夜叉丸君、勉強教えてくれない?」
それでも、ひとりだけ、頼ってくれる人が出来た。
私の話も、聞いてくれた。なにより凄いね、と笑ってくれた。
その人の笑顔を、初めて、自分以外に大切だと、思えた。守りたいと、思えた。
「タカ丸さん」
呼びかけたら、振り向いてくれる。
「なぁに?滝夜叉丸君」
名前を呼んでくれる。

全部全部、ただひとり、貴方が。

「今度は何を教えましょう」
「そうだねえ」
うーん、と悩んだ表情を、私の大好きな笑顔に変えて、
「うん、今日は滝夜叉丸君の事を教えて欲しいな」
勉強もしたいけど、もっと滝夜叉丸君の事も知りたい、と。初めて、そんな事を言われた。
「良いかな?」
「……えぇ、もちろんです」
それではたっぷり、私の武勇伝を。


私の話に、微笑み、感心し、頷いてくれる。
やはり私は、誰よりも、この人を愛しいと思う。
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