忍たま
□世界はおれを愛していない
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ねえ、ねえ、ねえ、
どうせなら切り離して欲しかった。
あなたはおれをすきにならない。
「兵助くん、大丈夫?」
伏せっていた顔を上げれば目の前に眉を寄せた斉藤が目に入る。
(これだから、このひとは嫌なんだ)
「……大丈夫です」
親切で伸ばされてきただろう手を、振り払うように立ち上がる。斉藤は眉を寄せたまま、けれど無理に触れようとはしないで俺を見ていた。
(ああ、やっぱり。だから、大嫌い)
「調子、悪いの?」
「悪くないです」
「でも、顔色悪いよ。保健室行く?」
目の前に手が差し出される。
泣きたくなった。
(何故、貴方は優しいのですか)
目の前の手を握ってしまえば、きっと留めて置いた言葉が溢れてしまう。だから俺は、斉藤の手をとらない。
黙って横を通り抜ける俺を、斉藤はただ心配そうに見るだけだった。
貴方と俺は、絶対に交わることの無い。
貴方はとても「普通」で「平等」、だから、きっと、おれをすきにならない。
それなのに、それでも、優しい。優しいから、俺は。
「俺ばっかり……」
好きになって、好きになって、好きになって、諦められない、そんなのって。
泣きたくなるだろう。
どうせなら、気持ち悪いと言ってくれればいい。どうせなら、俺を嫌いになってくれればいい。
どうせなら、関わらないでくれればいいのに。
それでも、貴方の、温かい温かい優しさが、俺を戻れない場所まで連れて行く。
(貴方は同じ場所に立って居ないのに、)