忍たま

□ひどく曖昧な境界
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「まるで恋人のようだね」


友人から言われた言葉を聞いて、僕らの頭には疑問符が浮かんだ。

そこまで親しくて、尽くして尽くされて、支え合って。お互いがお互いを一番大事に想い合ってる。まるで恋人のようだと思っているのは僕だけじゃあないよ。
そう友人が続けた言葉に、更に疑問符を増やし、僕らは互いに顔を見合わせ、「どこがだろう、僕らは親しい友達だよ。恋人ではないよ」と真面目な顔で言ったら。
「はたから見たら、そう見えただけだよ。君たちがそういうなら、僕たちの勘違いだ」
そう応えて少し笑った。



「ねえ藤内」
「なぁに数馬」
繋いだ手のひらから、優しい振動が伝わる。
二人だけになった空間で、僕らは互いの顔を見つめて話す。
「君は、僕のことが好き?」
「もちろんだよ」
「僕も好き」
「うん、知ってるよ」
「じゃあ、愛してる?」
「もちろん愛してる」
「恋人に、なりたいと思う?」
「ううん」
否定の言葉は、けれど僕たちには優しく響いて。
「そうだよね、僕もだ」
僕たちの確かな絆は、深い深い友情で。
それを確かめられたことにとても安堵する。

一番近くに居たい。
君のことを一番知っていたい。
君のために全てをあげる。
君が僕を一番に愛していると、確信出来る。
そんな関係でありたいし、僕たちはそんな関係であった。
僕らが望む、最高の関係を二人で作れている。なんて幸せだろう。

だから、僕たちの関係に、“恋人”などという名前は要らないのだ。
もしかしたら、この間柄を世間では“恋人”と言うのだとしても。
けれど、そんなものでは無い。
そんな言葉では言い表せない。


僕らは、僕らで、線引きなど必要でないのだから。
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