忍たま現代

□いちばん
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「きりちゃん、今日もアルバイト?」
「おう」
元気よく返事をしたきり丸に対し、乱太郎の顔は少し浮かないようであった。
それを不思議に思ったきり丸が理由を尋ねようとしたが、それよりも乱太郎の質問が先に声になった。
「今日って深夜のだっけ」
「うん、深夜」
「そっか……」
「……どした?乱太郎」
「ううん、なんでもないよ。アルバイト、頑張ってきてね」
「?、ああ」
やはり今日の乱太郎の反応はいつもと違うな、と思いながら、それでもきり丸はその反応の違いの理由を聞きだす時間はないらしく、不思議な顔をしたまま教室を出た。



「っ疲れさまーっス」
アルバイトも終わり、明日は休みだから久々にゆっくり寝れるぞ、ときり丸は帰り道を歩きながら考える。
バイト先からしばらく進んだ道の曲がり角。ふと電柱の影に人の姿が見えた。
まだ暗い夜道でその人影の顔までは見えず、怪しい奴だったらどうしようと、きり丸は慎重に距離をあけながら歩く。
「きり丸」
え、と驚きに一瞬固まる。何故、自分の名前が。
反射的に横目で確認したその人影は――
「お疲れ、きりちゃん」
「えっ、ら、乱太郎?」
笑ってきり丸の方へ歩み寄る、乱太郎の吐き出した息が白い。
まだ夜の気温は低い。鼻の頭を赤くして、この寒い中いつから待っていたのだろう。
「ちょっ……どうして、」
「だって、今日いちばんに会いたかったから」
「え?」
「きりちゃん、忘れてるの?」
「な、何を?」
「お誕生日でしょ?」
可笑しそうに乱太郎はクスクス笑った。
「え、ぁ、あー……そんなことでこんな寒いなか……」
「そんなこと、って」
拗ねたように唇を尖らせた乱太郎。
「いや、ごめん。会いに来てくれたのは嬉しかったんだけど!」
きり丸は慌てて言うと、乱太郎の手を掴む。
「……そう。なら、良いよ」
「ありがとな、乱太郎」
「自分の誕生日までアルバイト入れちゃうんだから」
ほんとにもう、と呆れた顔する乱太郎。白い息を吐きだすその横顔を眺めて、来年は休み取ろうかな……と思うきり丸なのだった。
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