忍たま現代

□忘年会をしよう!
1ページ/5ページ


「忘年会をしよう!」

急に小平太が言い出した。

「は?」
その場に居た五人は、何を言ってるんだ、と思いっきり顔に出して、提案者に向いた。
「急になんだよ……。忘年会ってアレか?サラリーマンがやるやつか」
「サラリーマンがやるやつってお前、それは偏見まみれだろう文次郎。……というか、小平太は何故それをしようと言うのだ」
文次郎と仙蔵が、全員の疑問をそのまま質問する。
「何故、って楽しそうだろう!」
にこにこと笑顔で言ってのける小平太。
それを見た留三郎は、呆れた顔で言った。
「あーそういう奴だよな、こいつは」
「まあでも、たしかに結構楽しそうじゃない?」
ちょっと困った顔で、それでも賛同する伊作に、長次もこくり、と無言で頷いた。

「じゃあ早速!」
どさっ、と小平太が袋に入った菓子その他諸々を取り出す。
「え、早速ってココでする気なの!?」
伊作がびっくりしたように言って、今居る教室を見渡した。
確かに今日は試験最終日、もう人は少ない。それに教室に残ってはいけないわけじゃ無いけれど。
こんなトコロで馬鹿騒ぎをするなんて、見つかれば絶対に怒られるだろうと安易に想像出来る。
「まあ大丈夫だろ、そんな大騒ぎしなければ」
「絶対するに決まってるだろうが、大騒ぎ」
留三郎の発言を、スッパリ切る文次郎。他の皆も、文次郎の言うとおりだ、と思った。
「ちょっとはメンバー見てものを言うんだな」
はっ、と鼻で馬鹿にしたように笑って、何時ものように留三郎を挑発する文次郎。
「なんだと?テメーが静かにしてりゃあ良い事だろうが!」
「俺だけの問題じゃねーだろ!!」
「主にてめえだろうが!!」
すでにこの二人が十分うるさい。
「だまれ公害」
それを止めたのは仙蔵。正確に言えば、仙蔵の拳、だ。

仙蔵の拳が炸裂した場所を抱え、悶絶する二人をさしおいて。残り三人は、小平太が持ってきた袋からどんどん取り出される、菓子やその他諸々を眺めていた。
「小平太が、ここまで準備してる……」
長次がぼそっ、と呟く。
「そういえば、そうだよね。小平太いつもいきあたりばったりなのに」
「珍しいな、確かに」
伊作と、やっと痛みから解放された留三郎が、不思議そうに小平太を見た。
にっこーとイイ笑顔をして、グッと親指を立てた小平太は、言った。
「楽しそうだと思って、ついさっき調達してきた!あと菓子は色んな奴からも貰ってきたぞっ」
貰ってきた――その言葉の背景に、どれだけの犠牲があったのか。
瞬間的に五人の脳裏には、想像であるにも関わらず、悲惨な強奪現場がクリアな映像となって流れていた。
「……やはりそういう奴だったな」
「準備してくるわけがねえな、こいつが」
仙蔵が、菓子を奪われた奴も不憫な……と呟く。納得の言った顔で、文次郎も頷いた。

「さて、やろう!!忘年会!!」
幾つかくっつけた机の上に、取り出したたくさんの菓子を置いて、「さあ食べろ」と言いながら、小平太は一番最初にあけた菓子袋に手をつっこんだ。
「つーかそもそも、これ忘年会、なのか?」
留三郎が疑問を口にしながら、近くのチョコをつまむ。
「まあ、真似事だし……一年の嫌な事忘れちゃおう、ってのだから楽しければいいんじゃない?」
困り顔で笑い、伊作もお菓子に手をつけた。
「忘年会というよりは、まだクリスマスパーティーの方が近い季節じゃ無いか?」
仙蔵が、文次郎が今まさに食べようと掴んだ菓子をひったくり、口に運ぶ。
奪われた方はというと、てめぇコラ仙蔵!なんでわざわざ俺のとったやつ食うんだよ!、とぎゃあぎゃあ騒いでいるが、ひったくった本人は一切気にしていないようだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ