忍たま現代

□俺に残った君の記憶
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コンビニの前で群がってる頭の悪そうな学生達。
制服を見れば、この辺りイチの馬鹿学校のもので。
迷惑っつー言葉知らねえのか、と内心毒づきながら、反面カラまれるのにビビって入っていけない自分がいる。情けない自分にも、群がってアホ面下げてくだらない話をしているそいつらにも、苛々した。

もうひとつ先のコンビニへ行こうか。いいや、それはなんだか負けた気がしてむかつく。なんでもない。無視して入店すればいいんだ。
ふーっと息を吐き出して、足を進めた。
が、ぴたりとすぐに止まる。
「うっわ、アレ、めちゃくちゃ頭いートコの制服じゃね?」
「マジだ。さすがガリ勉って感じの顔してる」
ぎゃはは、と下品な笑い声。頭に響いて鬱陶しい。
ていうかさっそく目をつけられるとか。
更にはそいつからがだんだんと俺に近づいてくる。うわ、カラまれる。
「ねー、ガリ勉くんは、お金使わないんじゃないの?勉強ばっかしてるから」
「そーそー遊ばないでしょ?」
「いらないお金ならオレ達にめぐんでよ〜」
…………は?
嫌な予想に、冷や汗がぽとり、と一滴落ちた。
「うはっ、冗談だって」
冗談に聞こえなかったぞ。
「つか、なんでそこつっ立ってんの?」
お前らが邪魔なんだよ……っ!
苛々する。だけど、声に出す勇気は起きない。
ああやっぱもうひとつ先のコンビニ行けば良かった、と思ったその時に、
「ねえ、俺達邪魔で入れないんじゃないの〜?」
間延びした声が、横から聞こえた。
「え、まじで?」
「ここのコンビニ行きたい感じ?」
尋ねられて、一瞬止まる。それから、首を縦に降った。
「ごめんごめん、ガリ勉くん」
群がっていた集団が、コンビニのドアの前から退けた。
あ、そんな素直に引き下がるんだこいつら。

「ごめんねぇ、お兄さん。気が付かなくって」
先程聞いた、どこか抜けたような声が、もう一度聞こえる。
声の方に向けば、きらきらと日に透けて光る金髪と、柔らかいふにゃりとした笑顔があった。
チャラそうな格好と頭の悪そうな雰囲気、なのだけれど。
「あ、いや、別に」
「馬鹿ばっかだからさあ。俺含め」
そう言うと、そいつは声を出して笑う。人懐っこい笑顔だ。多分、きっと、人に好かれる様な人間だ。直感が言っていた。
「でも、みんな悪気ないから〜。まあ良くないもんは良くないけどねぇ」
許してね、とそいつは言った。
「あ、いえ。気にしてません、から」
詰まりながら、言葉を吐き出す。
「ありがと」
その笑顔に、見とれてしまって。
今までの苛々と、少しの恐怖は、何処かへ飛んでいった。
「……あ、」
「タカ丸、行こうぜー!」
さっきまでゲラゲラと下品に笑っていた男達が、少し離れた距離で誰かの名前を呼んだ。
その声で、はっと我に返る。きっと、この金髪の男を呼んだのだ。
ちょっとだけ背の高い相手を、見上げる。
「あー、うん。……じゃ、連れが迷惑かけてごめんね、お兄さん!」
ばいばい、とそいつは手を振って、多分俺が望んでいたよりも、ずっとアッサリと別れは来た。
(それは、当たり前なんだけど)
だって、さっき会っただけで、それでカラまれただけで、俺はひとことふたことしか発して無いし、あのひとは他校の人で、

名前だって、
「あ、」
(……タカ丸、さん)

呼ばれていた名前。
それだけが、俺の脳内にきらきらの金色と共にこびりついた。
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