ヤンキー君とメガネちゃん
□“足立みてえな奴なんだよ”
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目の前に山のようにそびえたっている、作文用紙。
……こんなに書くわけねえだろ!
破るにしてもこんなに破ってたら日が暮れんだろうが!!
まったく意味が分からない。反省文を書け、と言われて俺が素直に従うハズもなく、作文用紙を破り捨てたら。
目の前の女は何も無かったかのように新しいものを目の前に置いた。そう、よくこんなに予備があったな、という程。
どうやって運んだんだよ、これ……。
紙というのは一見軽そうに見えて、辞書ぶんの厚さにでもなれば結構重い。作文用紙は、少なくとも辞書が二、三冊ではすまない様な厚さなのだ。絶対重い。普通ならなかなか持てもしないと思う。
――この女、バケモノかよ。
顔を歪めてメガネを見れば、きょとん、とした顔。こいつ、俺が怖くねえのか?
イラつく。顔を伏せて、くだらねえ、と叫んだら、
――――色々あって、縛られた。
何だコレ!?
つーか近えんだよメガネの女!!
さすがに多少なりとも顔が熱を帯びるのを感じた。
本当、なんなんだこれは。
しかも、こいつら。
俺の本当の気持ちを、――……
ぶちん、と何かがキレた。
「しょーーがねえだろ!!? どうしていいかわかんねーんだからよ!!!」
あぁ、ちくしょう。
やっと静まってきた感情を、片隅に残しながら、ついさっき聞かされた言葉を思い返した。
“足立みてえな奴なんだよ”
横目で、メガネの女をこっそりと見る。
なんだ、つまり。
ふうん、こいつも……友達いなかったのか……。
突然、そいつが俺に視線を向ける。
目に入ったのは、きょとん、と何も分かってない笑顔。
その顔が、頭に張り付いて、離れなかった。