ヤンキー君とメガネちゃん

□待ってて、もう少し
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追いつきたくて、追いつきたくて。
ずっと。



「葉ォ、この数に勝てると思ってんのか」
周りをぐるり、囲まれる葉。
その数は十や二十では無かった。
更に囲む奴らは葉よりひとまわりもふたまわりもデカく。きっと全て年上だろうと思われた。

「あぁ。思ってるぜ?」
ぎろり、と今言葉を発したおそらくこの群れのボスであろうそいつを睨みながら言うと、ピキ、とキレる音が聞こえそうな気がした。

「痛い目あわねえと分かりそうにねえな?」
「はっ、アンタらに出来んの?」
「・・・お前ら、手加減すんじゃねえぞ」
ざ、とその言葉で葉の周りを囲んでいる数十人が構え、最初からそのつもりねーですけど、と何人からか、怒りを含んだ声が聞こえる。

「かかってこいよ」
葉のそれが合図だったかのように、襲い掛かってきた。



――――――
――――

ハァッ、ハッ、と息を荒く葉が、それでも口を開き、
「まだ、・・・やる、かよ?」
周りには、倒れた大量の不良達。
「バケモノがっ・・・!」
完全に葉の気迫に押された最後の一人。もう、勝敗は決まっている様なものだ。
「こいよ」
ギロ、とにらみつければ。
「・・・ってめぇ、今後、どうなるか分かってんだろーな」
そんな事を言いながら、勝てないと悟った最後の一人は足をひきずり逃げていく。

「は、どんな奴がかかってこようが、俺が負けるわけねーだろ」
負けちゃ、いけないんだ。

あぁ、まだ追いつけるはずも無い。
こんな奴らに、こんなにてこずっているようなら。


「姉ちゃん、」
いなくなってから、忘れた事は無かった。
ずっと、探してた。
ずっと、想ってた。

姉ちゃんならきっと、こんな奴らは一瞬で倒せたんだろう。
ずっと、見てきた。
追いつきたくて、追いつきたくて、憧れて。
大好きな、あの人に。


姉ちゃんが俺の全てだから。

必ず、見つけなきゃ。
会いたいんだ。

だから、だから強く。だから、負けちゃいけない。
姉ちゃんの為なら、なんだってする。
会うためなら、自分がどうなろうと構わない。


「だからきっと、」
このままじゃ、駄目なんだ。


「待ってて、もう少し」
それでも、必ず見つけ出す。
必ず、会いに行くから。
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