ヤンキー君とメガネちゃん

□贅沢だな
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北見の目の前に、香川の顔。
その口からこぼれた言葉は。
「北見、好きだ」

告白の言葉。


「は、香川・・・?」
何言ってるんだと言葉にしたくて、口を開いたけれど、北見から言葉が発せられる事は無かった。
その前に、香川が「お前の答えは?」なんて事を、聞いてきたからだ。

「冗談、だろ」
絞り出した声は予想よりはるかにかすれた声。
「冗談じゃない」
知っている。香川がこんな冗談を言うはずが無い奴だって事は、北見には十分なほど、分かっていた。

「北見」
名前を呼ばれて、びくり、と北見の身体が震える。
「俺は、お前が好きだ。お前の答えが聞きたい」
逸らされる事の無い目と、力強い声。何もかもが、香川の言葉の重さを伝えてくる。

しばらく、黙っていた北見の口から、言葉が漏れる。
「・・・だって、駄目だ」
こんなの、と眉根をよせて、搾り出すみたいに北見の声。
「北、見?」
「だって、好きって言ったら、好きなんて・・・っ」
その目は今にも泣き出しそうだ。

「友達じゃ、なくなる・・・っ」


「たったひとりの、友達なんだ。香川っ、友達じゃなくなるなんて、そんなの、俺っ・・・香川・・・っ」
ほとんど言葉にならないそれは、悲痛な程の北見の訴えだ。

ぎゅうっと強く握った拳と、泣きそうな顔。そんな北見を、香川は無言で抱き寄せて。
「友達じゃなくなるなんて事は、無い」
小さいけれど。はっきりとした強い口調でいった。
「かが、わ?」
香川の顔を覗き込んだ北見に、
「俺はお前の、恋人にもなるし、友達でもいるつもりだ」
目を見て、そして、抱きしめる力を一層強くする。

「香川・・・」
赤くなった顔を隠すように、北見は顔を背けた。
「いてぇんだよ、馬鹿力」
それからぽつん、と北見が呟くと、「すまん」と言って香川は北見を離した。

「まぁ、とりあえず、俺はそう思ってる」
だから、答えを聞かせてくれ。
そういう香川は、かっこいいな、とそんな事を思って、北見は更に顔を赤くさせた。
「俺だって、好き、だよ・・・っ」

「そうか、じゃあ、これからよろしく頼む。俺は、お前の友達で、そして恋人だ」
香川がそう言って微笑めば。
「そりゃ、贅沢だな」
北見は、幸せそうな、泣きそうな、そんな顔で笑った。
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