ヤンキー君とメガネちゃん

□一応貰っとくわ
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ピンポーン。
チャイムの音がする。
「大地ー出て・・・ってそっか今アイツいないんだっけ」
弟に対応させようと思っていたのに。
こんな時に居ないなんて使えない、と思いながら、海里は玄関までダルそうに歩いていく。

「はいはーい」
「こんにちは」
「え、」
トビラを開けて、わずかに吃驚した様子を見せた海里の目にうつったのは、恋人である秋田の姿。

「遊びにきちゃった」
まだ春だというのに、うちわ片手に秋田が笑う。
「そお。入る?」
「入らないでどうするの!?締め出す気なの?」
「冗談冗談」
海里は笑いながら、秋田を家の中に招き入れた。

「ねえ、今日誕生日でしょ?」
「え?あぁ、そう言えばそうだったわね」
どうりで皆やたらと色んなモン送ってきてたのね。
お金になるからいいけど。
「そんなわけで、じゃーん」
秋田が自慢げに取り出したのは、
「・・・うちわ?」
「うん。特注だよ、職人さんにつくって貰ったんだ」
嬉しそうに話す秋田に、海里は呆れた顔。
「あれ?お気に召さない?」
「いや、まあアンタだから予想は出来てたんだけど」
秋田が持つうちわを見つめて、苦笑い。
「一応貰っとくわ」
差し出されたうちわを手にとって、目をやれば、なるほど特注というだけあって確かに綺麗だ。
(まあ、綺麗だけど誕生日に送るもんじゃ無いわよね)
ぱたぱたと扇げば、まだ少し寒く感じる風が自分の頬に当たった。

「どう?良いでしょ」
「そうなんじゃない?」
誇らしげな顔をする秋田に、海里は適当に返事を返して、リビングの方へ歩き出した。
「お茶いる?出来ればめんどくさいからあんまり出したく無いんだけ、ど・・・?」
腕を掴まれた感覚がして、海里が後ろを振り返る。
「ひとつ、忘れてた」


「誕生日おめでとう。海里」
「・・・ありがと」
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