ヤンキー君とメガネちゃん

□傍に居てくれませんか
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「香川君!!」
元気の良い声が、香川の耳に飛び込む。
振り返れば、そこには笑顔の花の姿があった。
「足立先輩」
なにか御用ですか、と訊ねようとする前に、花が話し始めた。
「今日って、香川君の誕生日なんですよね!おめでとうございます!」
「……!、覚えていて下さったのですか。光栄です」
足立先輩の事だ、自分だけでなく他の皆の誕生日だって全て覚えているのだろう。けれど、やはりこの人に祝ってもらうと嬉しいのだ。
香川はそんな事を思いながら、何時もはあまり表情の出ない顔に微笑みを含ませて、花に向かって頭を下げた。

「それでですね、私、何もプレゼント用意していないのですが……」
申し訳無さそうに俯く花に、香川は滅相も無いですと手を振った。
「全然構いませんので、気になさらないで下さい。お言葉だけでありがたいです」
「でも、私何かしたいです!」
花が拳をぎゅっと握って香川を見つめる。
「…………」
(その顔はずるいですよ、足立先輩)
「何か出来ること、ありませんか?」
「そうですね……」
呟くと、香川は頭を捻った。
(俺のものになってください、なんておこがましい事は言えませんが、)
「では、今日一日、傍に居てくれませんか」
香川は花の手をとりながら、やっと開いた口からそんな言葉を出した。
それから、じっと花の目を見つめる。
「それだけ、で良いんですか?」
きょとり、とした顔で首を傾けた花に、香川は頷いた。



「俺は、花さんと居れることが何より幸せですから」
(そう言ったら、花さんは俺の大好きな笑顔で、私もですと言ってくれた)
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