ヤンキー君とメガネちゃん

□去っていただけるとありがたいです
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「おい、あれって……」
「鈴鹿じゃねーか。つーか何で足立と一緒にいんだ?」
品川と和泉が怪訝な顔で、少し離れた二人の様子を観察する。

「えぇ、では、それで」
「はい!」
内容は聞き取れないが、花が鈴鹿に笑いかけている。
その状況だけで、品川と和泉を苛つかせるには十分だった。


「おい、鈴鹿」
「何話してんだ、てめー」
我慢できなくなった二人は、花と鈴鹿の間に割って入る。
その瞬間に、鈴鹿の顔は汚いものを見るかのように歪んだ。
「何ですか?先輩方。せっかく足立先輩と二人でお話しているんです。邪魔しないで頂けますか?」
それから鈴鹿は口の端をあげ、にっこりと微笑む。
「というか、テメーらに関係ねえだろ」
その笑顔の黒い事。

鈴鹿の言葉に、ぶつり、と二人はキレた。
「上等じゃねーかテメエ」
「覚悟は出来てるんだろーな?」
今にも殴りかかろうとせん二人に、
「二人とも!!落ち着いてください!」
花の声が響く。
「まったくもう、すぐに喧嘩しようとするんですからっ」

「おい、足立」
「はい」
「鈴鹿と何話してたんだよ」
品川の問いかけに、花はなんでもないという風に、
「ほら、今日って鈴鹿君のお誕生日じゃ無いですか。だから、是非一緒にと言われまして」
と笑って話した。
その言葉に、ぴくり、と品川のこめかみが震えた。和泉の方も、信じられないとでも言いたげな表情をしている。
二人の反応を見ていた鈴鹿は、満足そうな顔をして口を開いた。
「そんなわけで、僕はこれから足立先輩と行きたい所がありますので、あなた達は去っていただけるとありがたいです」
またしても鈴鹿は、とびっきりの黒いスマイルで二人を威圧する。

鈴鹿の態度には苛々するが、今の二人はそれどころではない。
どうやって花が鈴鹿に同伴することを止めようか考えるのに精一杯だ。
「こ、こんなやつとどっか行く事ねーって!」
「そうだ、何をされるか分かったもんじゃねえぞ」
焦ったように言う品川と和泉に、鈴鹿は不満げな目線を投げかけた。
「失礼ですね」

「つーか!メシおごってやるからよ!」
「何でもいいぞ!?お前の好きな肉とか!どうだ?」
どうにか花を鈴鹿と一緒に行かせないようにと、二人は必死だ。
品川と和泉のウマイ話に、花は涎をたらしながら「お肉ですか……」と呟く。
鈴鹿はそんな花の様子を見つめて、小さく溜め息を吐いた。
(食べ物で釣るとは……ああ、これはせっかくのチャンスが無くなってしまうかもしれませんね。まあ、足立先輩が決めたことは、仕方ないですが)

「いえ、でも、約束は約束ですから!」
(……え?)
品川と和泉が「おい、足立!」とびっくりしながら叫んでいたが、一番驚いていたのは他でもない、鈴鹿だった。
「ね、鈴鹿君」
「……え、えぇ」
言葉に詰まりながら返事をする。
鈴鹿は未だ、花の言った言葉が信じられずに居た。

「では、行きましょうか鈴鹿君!」
花が笑って手を差し出す。
「……はい」
何よりも自分の約束を選んでくれた花を、いつも以上に愛しく感じながら、鈴鹿は花の手をそっと握った。
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