ヤンキー君とメガネちゃん

□ありえないんですけど!
1ページ/2ページ



品川大地という男は、鈍感なのである。



「よお、アンナ。北見と香川はどうした?」
唐突。
話しかけられた方に向くと、品川が立っていた。
「べっ別にアンナ、いっつもあいつらと居るわけじゃないし!」
びっくりしつつ、その男の問いに答えようとはしたのだけれど、如何せん素直とは言い難い性格だと、自分でも思っていて。こんな時にはその性格が少しだけ恨めしかったりする。

「放っていかれたのか?」
ニヤニヤと意地悪く笑うその顔に苛々したけれど、何故か顔が赤くなってしまったのも事実。
「ちょっと!それ失礼じゃない?」
誤魔化そうと、声をはりあげる。
怒ってみたりなんかして、顔赤いの誤魔化せてると、良いんだけど。
そんなことを考えながら品川を見ていたら、今度は馬鹿にした笑い方じゃなくて、微笑むように。
いきなり、アンナの頭に手をのせてきた。
「悪ぃ悪ぃ、冗談だよ」
その手がアンナの頭をぐしゃぐしゃ撫でた。
何それ、ズルくない?
何笑ってんのよ。何撫でてんのよ。
ばっかじゃないの。
「髪、セットしたのに乱れるんですケド!」
もう本当、自分が可愛く無い。
「はいはい」
「……っ」
自分から離れていく手を、寂しく思うなんてどうかしてる。


「っていうか、なんでアンナが仲間はずれにされたみたいな言い方してんの!?」
「違うのかよ」
「当たり前でしょ!」
あいつらは、アンナがいないと何も出来ないもん。馬鹿だから!
だから、アンナ仲間はずれにするとか有りえないんですけど。
「二人は、なんか今日用事あるってゆーから」
「ふーん」
納得をしたのかしてないのか分からないような返事をしたあとに、
「でも、お前今からひとりで帰るんだろ?」
とか、聞いてきたから、なんとなく頭にきた。
「だから!?」
少しキレそうになったアンナに、品川が笑う。
「じゃあ、一緒に帰るか?」
「は?な、何でアンナがあんたとっ!」
言っていて、言葉に少し動揺が出たことに気が付く。
それでも、鈍くて仕方の無い品川は気が付いていなかっただろうけれど。
「いや、今日足立も先帰ったしな。まあ、どうせならついでに」
「……っ」
あぁもう、なんなの。

「何ぼーっとつったってんだよ、帰るぞ」
「っ、ばーか」
「は?」
「馬鹿って言ったのよ、馬鹿って」
意味が分からない、って顔を品川がしてる。それを横目で見ながら、アンナは横を通り抜けた。
「あ、オイ、待てって」


本当に、あんた、
なんで気づかないのよ。

「どんだけ馬鹿なの」

ありえないんですけど!
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ