ヤンキー君とメガネちゃん

□なんだこのムカつくガキは
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校内に、ぽつん。
一人の子供が居た。

(おいおい、どこのガキだ?なんで入ってきてんだよ)
和泉は廊下でうろうろとする子供の方へ、ゆっくりと近づく。
「おい」
無視。
「おい、聞いてるのか」
「なんだよ、おれに言ってんの?」
振り向いた子供は、可愛い顔をしていたが、その口調と僅かに片方だけつり上げられた口元がどうにも自分を馬鹿にしているようで、和泉の癪に障った。
「お前しかいないだろうが」
「おい、だけじゃわかんねえよ。つうか子どもにそんないあつてきなたいどってどーなの?」
「・・・!?」
なんだこの生意気なガキ!
和泉はすでに、プチっと切れそうな血管を、なんとか理性でつなぎとめる。

「お前、どこから入った?ここは小学生のくるところじゃないぞ」
「どこから入ったっていいじゃん、おまえにかんけいないだろ」

ぶっちん。
「いいだろう、このガキ・・・大人とはどういうものか思い知らせて、」
意外にキレやすい和泉は、子供相手にゆらりと身体を揺らし、怖い目をして近づいて行った。

そのとき。
「葵くんっ」
「花ねえちゃん!」
(ん?)
目の前の子供の名前だと思われるのを呼んだのは、廊下の先から近づく、花の声だった。
「こんなところに居たんですね、探しましたよ!」
近くまできた花が、子供――葵、と呼んでいた――の頭を撫でる。
それから、和泉の方へ向き、「和泉君、一緒にいてくれたんですね!ありがとうございます」と笑った。
その笑顔に、和泉の心臓は早くなる。

「なんだ足立、このガ、んん゛ッ・・・子供、と知り合いか?」
どきどきと五月蝿い心臓は悟られぬよう、冷静なふりをして和泉が尋ねれば、花は
「はい、親戚の子なんです!」
ともう一度、葵の頭を撫でた。
「まいごになっちゃって、ごめん、花ねえちゃん」
葵のほうはと言えば、今まで和泉に向けていた態度からは思い浮かばないほどのしおらしさで、花に向けて頭を下げている。
さっきと別人だろ、と和泉は思った。
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