ヤンキー君とメガネちゃん

□おれが姉ちゃんの弟だから?
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「ほんと品川くんは足立さんに弱いね」

千葉が言っていた。
自覚がないとは、言えない。ただし真っ向から認めるほどの自覚はないし、ついでになんか悔しいから認めていない。



「大地って姉ちゃんに甘いよな」

なんだってんだ、皆して同じようなこと言いやがって。

千葉と同じようなことを言いやがった葉は、当たり前のように俺のベッドに居座っている。
「……んなつもりねーんだが」
どうせ勝てないのでベッドを占拠している事への文句は飲み込み、本日二度目になる指摘について思った事を口に出した。
「自覚なし?」
「…………るせーな」
「自覚あんじゃん」
「足立がムチャクチャしやがるから甘いもクソもねえっつーの」
「姉ちゃんのやることなら最終的に何でも許しそうだな大地」
じろーっと冷めたような目で見てくる葉。
いや、何でもは許さねーよ。つーか今までの突飛な言動も別に許してるつもりはない。俺が何言ったって、足立には足立の信念があって、それを曲げられる気がしないから勝手に俺が折れる事になってるだけだ。……これが、甘いとか弱いとか言われてんのか?

「だいたい、足立に似てお前も大概ムチャクチャだからな?」
俺ん家に勝手に住み着いてるくせに、と文句を言いかけた口が止まる。葉が、顔を伏せて固まったからだ。
「葉?」
口をつぐんで、返事もない。
「おい、葉。どうした」
葉は、何も話さず少し俯いたまま。かれこれ数分はこの状態だ。
「……ハァ。言わねーと分かんねーよ」
その言葉で、ぴくっと葉の身体が揺れた。
そしてようやく声が聞こえた。
「なあ、」
「ン?なんだよ」
「おれに優しいの、って」
それから葉は言いにくそうに目を伏せたままで、また何もしゃべらない。
俺がハテナを頭に浮かべていると、バッと葉は勢いよく顔をあげた。
「おれが、……姉ちゃんの弟、だから?」
「は?」
「だ、大地は……姉ちゃんに甘いじゃん。だから……姉弟だから、おれにも、優しいの?」
最後には、少し泣きそうな顔だった。
(ああもう、本当強ぇくせに、そんなすぐに泣きそうな顔すんなよな)
葉は足立に似て強引なくせに、ふと妙に弱気なところがある。なんだか複雑そうな家庭の影響もあるんだろうか……まあ、わざわざ聞く気は無い。

なんでも良いが、変なところで弱気になられるとこっちが調子が狂うんだよ。
「馬鹿じゃねーの」
呆れた声を出した俺の顔を、葉はびっくりしたように見る。
「え?」
「そんなんで俺が、お前みたいな図々しいやつに優しくするわけねーだろ」
は?と葉の顔が怪訝そうに歪む。おい、泣きそうだった顔はどこいった。
「あのなぁ」
ああもう、ここまで言ったからには最後まで言ってやるよ。
「お前のこと、嫌いじゃねえからだろーが。言わせんな」
「……わかりにく」
「るっせーよ」
でも伝わってんじゃねーか。
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