保健室の死神

□今はまだ
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つまんねえ。


学校なんて、本当つまんねえ場所だと思う。

「藤くん!」
「ぅわ、っ」
ああ、めんどくさい。
大量の女子たちがいつの間にか俺の周りを囲んでいた。何時もの事だけど、本当、面倒くさい。
藤くん、藤くん、て用も無いのに、なんで休み時間になる度に俺の所に来るんだろう。
こんなに露骨に。嫌そうな顔をしているのにまったく気にしてないなんて、逆に凄いかもしれない。

そろそろ本格的に鬱陶しくなって来たから、囲まれているこの場所から逃げ出そうかと考えていたその時に、廊下を歩くアシタバの姿が目に入った。
丁度良い。
俺はそのままアシタバの方に走り寄った。
「アシタバ!」
「藤くん?」
「こっち来い!」
ぐい、と困惑するアシタバをひっぱって、追って来る女子達から逃げるように保健室に入り込んだ。
俺を見失ったのか、それとも保健室には入りたくなかったのか、さすがにここまでは入ってくる様子が無かった。
「は〜〜」
「ふ、藤くん、大丈夫……?」
アシタバが心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
「ん、あぁ」
なんだかんだで、コイツの横が一番安心する気がする。

「いらっしゃい」
「うわ!」
背後から保健室の主。何時もながら不気味にふふふ、と笑っている。
けれど多分、これは訪問者を嬉しく思っている顔だろう。はたからは、そうは見えないけど。
許可をとってベッドにぽすん、と腰掛ける。ため息を少し吐いた。
「あーもうメンドクセ。毎日よくあきねーな」
「僕はちょっと羨ましいけど」
アシタバが遠慮がちに俺の方を向いてそう言った。
「どこがだよ?毎日あんなんで、俺の自由時間無いぜ」
俺がよっぽど嫌そうな顔をしていたのか、ちょっとだけ困った顔をして、
「そっか、モテても大変なんだね……」
と呟くように言った。
「どーにかなんねーかな」
ごろり、今度は腰掛けていたベッドに倒れこんだ。
アシタバも座るなり何なりすれば良いと思うのに。つっ立ったまま俺のほうを見てるのは、やっぱりアシタバらしいと言えばらしいかもしれないが。

「藤くんカッコイイしね、しょうがないよ」
苦笑いと一緒に、アシタバがそんな言葉をかけてきた。
カッコイイ、ね。
そんな言葉は何時も囲まれる女子達に言われているのに、アシタバに言われると、ちょっと照れくさいのは、何でか、なんて。
「とっくに分かってる事だよな……」
その理由を、俺はアシタバに言う気は無いけど。

「藤くん?何か言った?」
「……なんでもねえよ」

とりあえず、今はまだ。
友人として、横に居たいと思う。
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