保健室の死神

□「愛してる」は伝わらない
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アシタバくんは可愛い。

こんな僕に話しかけて、微笑みかけてくれる子。


可愛くて、可愛くて、本当に、大好きで。
誰より愛しくて。
誰より大切。

「好きだよ、」
「愛してるよ、」
「大切だよ、」


大切だから、守っていくよ。
例えこの想いは報われなくとも。
「愛してる」を伝えてはいけなくても。

大切な人にかわりは無いから。これからもずっと、守っていくよ。
こんな僕に笑ってくれた子だから。こんな僕に話しかけてくれた子だから。
こんな僕が、愛しく思った子だから。

何時までも、守っていく。


「先生、僕、先生の事」
好きです。
言われたから、僕は「ありがとう、僕も好きだよ。アシタバくんは大切な大切な、生徒だ」と言った。

その時、ほんの一瞬だけ。寂しそうな顔をしたのは、どうしてだろうと思った。

苦しかったのは、僕なのに。想いを伝えられない、僕なのに。
だって、君が言う「好き」と僕が言う「好き」は違ってしまうんだよ、アシタバくん。
僕が言った「好き」は「愛してる」になってしまう。だから「大切な生徒」なんて言葉に出す。
「愛してる」は言ってはいけない、から。


――もし、アシタバくんの「好き」が「愛してる」でも。
それでも、言っちゃいけない。
ぁあ、そんな都合の良いことは、あるわけが無いけれどね。



それに、
こんなに可愛い子。

僕がひとりじめにしちゃ、駄目だよね。


だから、やっぱり「好き」は言わないんだ。
「愛してる」って言わないんだ。
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