保健室の死神

□こんなの、嘘だ!
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俺は女の子大好きで。

それで、これが肝心なんだけど。
あいつは、男なんだよ。


おかしいよな、絶対おかしい。
何が、ってそりゃあもう。あいつにちょっとでも動揺したりする事が。

あの長い髪がゆれると、どっからかドキ、って音が聞こえてくる。
いやいやいやいや、おかしいから!
だって俺、女大好きだし!
何男相手に、ドキ、とか。おかしいとしか言いようが無いだろ。
よく考えろよ自分。
だってあいつだぞ。
ひょろくって、無駄に「美っちゃん美っちゃん美っちゃん」うるさい、あいつ。
どう考えたって、おかしいんだ。

俺が悪いんじゃない。
「本好、」
そう、絶対あいつのせい。
多分多分、あいつの長い髪が悪い。一瞬女子に見えるだろ、だからきっとそれが悪い。
自分に必死に言い聞かせる。
だってそうしなきゃ、絶対おかしいから。


「!」
なんとなく本好を追っていた目が、こっちを向いたそいつの目と合う。
ドキドキとか、そんな音がするのはふざけてる。うるせーよ、俺の心臓!
「なんか不快な声が聞こえたんだけど。安田呼んだ?」
「呼んでねーよ!つか、不快ってなんだ、不快って!」
「ふうん、あんな不快な声は安田しかいないと思ったんだけど。まあいいや」
「失礼にもほどがあるだろ!」
「安田の声ならどこでも分かるよ、きっと」
不快すぎて。とか、そんな部分は都合よく聞こえない俺の耳。
緩みそうになった頬に気が付いて、慌てて口を覆った。
馬鹿じゃねーの、馬鹿じゃねーの!
何嬉しいとか、思っちゃってんだよ。

もう本当俺、ありえねえ。
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