保健室の死神

□なんでこんなに好きなんだ
1ページ/2ページ


「安田」
「何だよ、藤」
「顔。緩みきってんだけど」
「だから何か!?」
くわりと目を見開き、安田は握りしめていた携帯を藤の前にばっと差し出す。
「見れば分かるだろ!!」
「は?」
わかんねえよ、と零した藤を安田は信じられないと言わんばかりの顔で覗き込む。
それから、携帯の画面を指差し、
「熱子!俺の心のオアシス!!」
突如、叫び出した安田に、藤は若干引き気味だ。眉根をよせ、だから?と言いたそうな表情。
「熱子見てて緩まない顔を俺は持ち合わせていない!」
「……何を自慢げに」
呆れた様子で息を吐き出せば、安田の叫びがまたしても耳に届いた。
「うるせえこのイケメンがぁああ!そうだよ、お前はモテるから、女子なんて嫌ほど集まってくるから、分かんねえだろうがなっ!俺は熱子がいねえとやってけねえんだよ。ったくこれだからイケメンは。滅びろ!!」
一気にまくしたて、最後に思いっきり舌打ちをして、安田はやっと落ち着いたのか携帯を自分のポケットにしまう。

息を吐き出しながら、安田が机に突っ伏した。
「あーくそ、体力使わせてんじゃねえよ」
「あ?どうかしたのか?」
「昨日徹夜で並んで熱子のグッズ買ったんだよ、もう限界だ」
「……お前、やっぱ救いようがねえよ」
「うるせえ、なんとでも言え!」
起き上がる様子の無い安田を見つめながら、藤は聞こえないくらいの小さなため息を吐いて、考えた。

ああ、俺はなんでこんなやつ好きなんだ。


「熱子ぉ〜」
「…………」
(やっぱり分からねえ)
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ