保健室の死神

□君のおかげで輝く俺の世界
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俺に、美っちゃん以外の友達が出来た。

アシタバくんとか、あと藤もかな。
え?安田?誰それ。


俺の狭い世界に入ってきてくれたんだ。とても嬉しかったよ。
もちろんその機会をつくってくれた美っちゃんには、感謝どころじゃ足りないけど。


だから、美っちゃんが創ってくれた「友達」がいる世界を、とてもとても大切にしようと思ってる。

けれど、やっぱり俺はね、美っちゃん。
美っちゃんとふたりで居た、ふたりだけだったあの世界も、とてもとても大切にしていたから。
少し寂しい。
あの世界は俺が生きてきた世界だから、そこから出るのが怖いんだよ。

美っちゃん、美っちゃん。
ごめんね美っちゃん。
美っちゃんのためにも、俺は新しい世界の中で、一緒に居るべきなんだよね。


だけどあの世界は、大切で、とても大切で、捨てるには俺には大切すぎたよ。
だから怖いんだよ、捨てるのは怖い。


俺は、未だ弱いよ。



「本好!」
名前を呼ばれて、びくりと肩が震える。
帰るぞ、と美っちゃんの声。
「美っちゃん」
俯いていた顔をあげれば、美っちゃんは眉間に皺をよせた。
「お前、なにあん時みたいな顔してんだよ」
「あの時?」
「お前がひとりだった時」
ひとりだった時――美っちゃんと友達になる前のこと?

「お前、もうひとりじゃねえだろ?辛気臭ぇ顔してんじゃねえよ」
「美っちゃん」
「アシタバ達がいんだろ。それに、ずっとオレと親友だろ」
それから、にかっと笑った美っちゃんは、やっぱり世界一かっこよかった。

「そうだよね」
「ああ。ほら、帰んぞ」
「うん」


そうか、俺は。

あの世界を失うのが怖かったんじゃなくて、美っちゃんが離れてしまう事が怖かったんだ。

でも、美っちゃんは新しい世界のなかで、俺の一番近くにいてくれる。


いつも俺を救ってくれる。

どんな時だって、美っちゃんは俺のヒーローだ。
(君は何時だって輝いているんだ、!)
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