保健室の死神

□世界は僕らを認めてくれない
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君は確かに僕を好きだと言った。
それは愛しているの意味の好きだと言った。


「そうか」
呟いた僕に、藤くんが僅かに片眉を下げた。

君は、僕が、好き。
口のなかでその言葉を繰り返す。
確かめるように、そっと。

「それで、藤くんは」



どうするの?

僕と『恋愛』をしたいの?



ねえ、それをしてどうするの。




僕と手を繋ぎたいの、
僕を抱きしめたいの、
僕にキスしたいの、

恋人、ってものに、なりたいの?



ごめんね、藤くん。


君が好き。
きっと、僕も君が好き。




だけどね、決まっていたんだよ。
僕らが生まれたときから。
僕達は恋をしてはいけないって。

世界はそれを認めてくれないよ。



「アシタバ」
僕の顔を、藤くんは悲しそうに見つめた。

ああ、君も分かってるんじゃないか。



意味の無いこの世界を、僕らは歩かなくちゃならない。
「だから、」
前だけを見て。
僕達が、手を繋いでも、抱きしめ合っても、キスをしても、
恋人になっても、世界は変わらない。


世界は僕らを認めてくれない。
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