保健室の死神

□後戻りできない世界に足を踏み入れてしまいました。
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何なんだよ。
放課後保健室に来い、ってそれだけ言ってサボりやがって。
なんなの?起こしに来いってこと?俺パシリ?

ひとつ、小さくため息を吐く。
「アシタバじゃねーんだからさぁ」
アイツ起こしに行くのとかアシタバの役目じゃねーの?たまに行ってんの見たことあるし。なんで俺?
俺、アイツになんかしたか?いや、そんな覚えはさらさら無い。
つかアイツと俺あんま仲良くねーし。美作とかと一緒にいるから知ってるだけだし。むしろ俺アイツ嫌いだし。世の中のイケメンなんて皆滅びれば良い。
……すっぽかしてやろうかな。

そんな事を考えている間に、保健室前。
しょーがねー。
ここまで来ちゃったし、考えるのは止めにして俺は保健室のドアを開けた。
「おじゃましまーす……ってアレ、先生いねぇのか?」
辺りを見回してもあの不気味な顔が無い。
「まぁいっか」
それよりアイツだよアイツ。どこいやがる。
ふと耳をすませば、ベッドの方から寝息が聞こえる。
「あの野郎っ」
ずかずかと大股で気持ち良さそうな寝息が聞こえる場所に近づいていく。それから閉じられていたカーテンを思いっきり開けた。
「てめぇ寝てんじゃねえっ」
人呼びつけといて、何をすやすやと!

大声を出したおかげかベッドの上に転がる寝太郎はやっと目を開けた。
「おー安田、何だよもう授業終わったのかよ」
「終わったから来てんだろーがよ!」
「ふーん。オツカレサマ」
ふわぁ、とあくびをかみ殺しつつ、藤は体を起こす。
そのダラダラとした動きに俺はキレかけていた。

「で、何の用だよ、藤」
藤に来いって言われてきてみれば、肝心の呼び出した本人がそれを忘れたかのような言動を繰り返しているのだから、これ俺、キレてもいいと思うんだけどな、考えながら、最後の慈愛を発揮して、優しく聞いてやることにした。俺偉い。
「何の用、って?」
「は?」
何ソレ、みたいな顔しやがったこいつ。まさか。
「お前が来いっつったんだろ……?忘れてねえよな?」
あ、やっべ、頬の筋肉ひきつってる。いやでも、これもうキレて良いレベルじゃね?
「……あぁ、うん、忘れてねぇ忘れてねぇ」
う、嘘つけええぇぇぇえ!!
「ふざっけんな!意味分かんねー俺は帰るっ」
藤に向けていた体を180度回転させて、保健室のドアへ向かう。
意味分かんねええ、何だあいつ自己中にも程があんだろうが。
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