保健室の死神

□お前を守れない俺ならいらないと、君の目が言うから
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僕の顔に手を伸ばして、藤くんはぎり、と僕にまでその音が聞こえてくるほどに、歯を食いしばった。
「ごめん」
何かを噛み殺すように口を開かなかった藤くんが、ゆっくりと、小さな声で言うのを、僕は聞いた。

「藤くん……?」
ごめん?
ごめん、って何。
「謝るようなこと、してないよ?」
その言葉に、藤くんは泣きそうな顔をした。
なんでなんで、なんでそんな顔するの。責めてくれ、みたいな顔。
本当にだって、思い当たらない。何がごめんで、何がそんなに藤くんを責めてるの。
「あし、たば……っ」
「藤くん」
壊れそうだ。藤くんが壊れそう。
やめてよお願い。
そんな顔しないで。なんでそんなに自分を責めてるの?
顔が歪みそうなくらいに眉を寄せて、歯が砕けそうなくらい食いしばって、皮膚が裂けそうなくらい拳を握りしめて。
心が壊れそうなくらい、

「っ、守れな、かった、俺、俺はっおまえ、を、」
苦しそうに途切れる言葉に、僕の顔が歪む。
違うよ違うんだよ藤くん。


「ごめん、ごめんっ」

泣かないで藤くん、大丈夫ねえほら僕は無事だよ、泣かないで泣かないで。
藤くんの方がつらそうだ。

手を伸ばす。
藤くんの顔は、悲しみに歪んでる。
触れようとしたら、その身体は震えていることに気が付いた。
「大丈夫、僕を見て、藤くん」
今、笑っていられるでしょう?
だから大丈夫だよ。こんな傷が何だって言うの。
「痛く無いよ。きっと、君のほうが痛いから」
震える手を強く握って、僕は笑った。
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