保健室の死神

□人気投票結果のはなし
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「……本当に、あれで良かったのかなぁ」
ひたすら疑問だ。
なんで、僕が――――。


眉を寄せて考え込んでいると、目の前にスッとハデス先生の長い腕が伸びてくる。
「アシタバくん、一位おめでとう」
「うあっ、ありがとうございます」
僕も右手を差し出して、その手を握った。
「アシタバくんの頑張りが皆に認められたんだね。僕も嬉しいよ」
「ほ、ホントに僕でいいのかなぁ……?」
ちょうど今自分が考えていた話題を振られたものだから、不安になってぼそりと呟くと、
「当たり前だろーが」
と、横から声がした。
そこにはいつの間にやら友人の姿。
「藤くん……」
「アシタバが一位じゃなくて誰が一位なんだよ」
藤くんがそう言って、にっこりと微笑む。そんなカッコイイ顔で言われても……余計自信なくなるけど。

藤くんがハデス先生と握っていた僕の手を横から取り、自分の手でぎゅっと握ってくる。
「俺の中でもずっと一位だから。アシタバ俺と「アシタバくんおめでとう。さすがだよね」
「チッ、本好ぃい邪魔すんじゃねえ!」
「あ、ありがとう本好くん」
本好くんのお祝いの言葉で、藤くんの発言は途切れてしまった。
藤くん、何言いかけたんだろ?
「藤くん、何か言っ……」
「アシタバ!!お前一位なの?スゲーじゃん!俺四位、四位。いやでも脇役としてはこの位置って結構凄くね?むしろ事実上一位っつーか、アシタバと同じって事でどーよ?」
安田くん……テンション高いね。
そして意味が分からないよ。

「つーか!何で俺が六位!?おかしーだろ!アシタバと先生はともかく。あとまあ、しょうがねえから藤も良いとしてよ!なんで安田と本好より下なんだよ!!出番的にちょっと待てよ俺だろっていう!」
突然、美作くんの叫びが響く。
本好くんは、憤慨する美作くんに、宥めるように声をかけた。
「美っちゃんのファンは皆シャイなんだよ」
「そ、そうか……?」
「そうだよ、本来なら二位にはなって良い筈だよ」
「二位?一位じゃねえのか?」
「……一位はアシタバくんだよ?」
「あ、うん。そうだよな……」
本好くんは僕に背を向けていたから分からなかったけど、何かあったのかな。美作くんの表情がひきつっている気がする。

「うーん、アシタバ一位かぁ」
安田くんが唸り始めたので、ちらりと横目で見てみる。
「え、な、何か……」
それって、やっぱり僕が一位って不自然ってことかな?
「……いやでも、それってアシタバを狙ってる奴が多いって事なんじゃね?って思って」
「へ?」
「ちょっと待てそれは困る」
何を言っているか分からなくて、ぽかんとしていると。渋い顔で藤くんが、そう吐き出した。
「アシタバは俺のだからな!」
誰にも渡さねえぞ、と言葉は続き、僕の頭に両腕が回されて、ぐいっと引き寄せられる。
ん?何、え、どうしたの藤くん。
「はぁ?何時お前のもんになったんだよ!」
「今の発言は解せないよね」
「うん、今のは僕も見逃せない」
え?え?
美作くんと本好くん……それに先生まで。
藤くんに向けて何か文句を言っている。
「俺はまあ、たまにこう、ほら。イタズラとかしても良いんなら……別に……誰のとか、うん、な?」
「安田一回死んできたら?」
も、本好くん、顔怖い。

て、いうか何この無言。
皆黙ってる。っていうか何で睨み合ってるの?
もしかして僕のせい……!?い、一位僕ってのが不満なのかな?
「えっ……と。ぼ、僕一位ってお、おかしいよね、えっと、」
あわあわと焦りながら続きの言葉を述べようとすると、みんなの顔が一斉にこっちを向いた。
「「「「「おかしくないから!」」」」」
「そ、そぉ……?」
びっ、びっくりした。
物凄い勢いで否定されたから、続ける言葉が見つからずに皆の顔を眺めるしか出来ない。

「アシタバくんは一位だよ、ちゃんと」
「そーそーファンの皆さんが選んでくださったんだからよ!ちゃんと自覚しろよな」
「自信持ってよ、アシタバくん」
「お祝いになんかしよーぜ?アシタバ、コスプレとかしてみ「安田死んで」
「アシタバが、一位だよ」
「……!」
そうだ、よね。ぐだぐだ悩んでたのが馬鹿らしい。

「ありがとう、みんな」
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