保健室の死神

□結局。
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面倒くさい事は嫌いだ。
面倒くさい事は全力でやらない主義だ。

出来るならば動きたくない。
徹底して自分から動くことを避ける。俺はそういう人間だ。

それなのに。


何故だか最近は、自分から動くことが増えた。
俺は出来るならずっと寝てたいのに。じっとしていると、どうしてか気になる存在があって。
ついついそいつの元に出向いて、そいつの横にいて、そうすると安心するから。

「アシタバ」
「なに、藤くん」

ほら、声を聞いて、やっと一息。



「藤って、アシタバ好きだよなあ」
誰かが言った。
好きってなんだ。
「好きってなんだよ」
思ったことは、すぐ口から出る性質だ。そのまま言葉にすると、そいつは笑った。
「だって、藤って今まで誰にも自分から話しかけなかったじゃん」
「そんなこと、」
ねえよ、と言おうとして思い至る、確かにそうだった。
今まで、自分から話しかけるようなことはほとんどした覚えがない。
話しかけられたから、話す。聞かれたから、答える。
そんな、俺が。何故。

「はは、ほら。やっぱり藤、アシタバのこと好きだな」
そいつが、当たり、と言いたげな顔で笑った。


俺は考えていた、さっきの言葉の意味を、理由を、釈然としないこの頭で。
俺は何故、アシタバにかまうのだろう。

あいつが、何故か放っておけない雰囲気を出すのが悪いと思う。
おどおどしてて、小動物みたいにびくびくしてるから、なんか守ってやんなきゃ、って思うんだ。
それから、優しすぎるやつだから、へんに騙されたり頼みごとされたりなんかして、アシタバが困んねえように、って。俺が横にいなくちゃと思う。

それに、アシタバの一番は、俺がいい。

(あれ?)



結局。
(何だ、それは。俺があいつを好きって事じゃねえか)
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