デスノート
□まるで本能。
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小さなころから、マットは他の子どもと違っていた。
いや、ワイミーズハウスには、一般と言われる子どもはいなかったようには思うけれど。
自分も含め、特殊で特別な人間ばかり集められていたあの場所で、しかし自分の目にはマットはいつも他の子どもたちと違うように映っていたのだ。
話したことは、数えるほどしかなかった。
外でみんなと遊ぶ自分にひきかえ、いつも引きこもってゲームをするマット。
自然と、接することは少なくなる。
それに、同じ外が嫌いな者でも、ニアのように一番なわけでもないのだから、ライバルと言ってつっかかるようなことも無い。
マットももちろん、頭は良かった。良かったのだけれど、他の者をぬかそうだとか、そういった感情はどうしても見て取れなかった。
何事に対しても、さして情熱を見せず、ただ気だるげにこなす姿は、他のやつらとは一線をひいていたと思う。
そんなマットだから、話すことも無かったのだ。
マットは、他人と関わることに、たいして興味が無かったのかもしれない。
それでも、どうしてかその存在が気になった。
話してみたい、と。触れてみたい、と。
そう思っていた。
それでも、きっと話すことはないのだろう。いっしょに笑い合うことなどないのだろう。
そうやって、諦めてもいた。
だから、唐突に話しかけられたあの日。
いまでも覚えている。
目の前でゴーグルの奥の目を見つめたあの瞬間は、人生の中できっと一番の衝撃だった。
「メロって、俺がすき?」
そう聞かれたとき、マットの目があまりにも確信を持っていて、それから誘うように笑ったものだから。
否定の言葉は、はなから頭に浮かんでこず、その唇に引き寄せられるようにキスをした。
唇を離すと、満足だとでも言いたげにマットは自身の唇を舐めた。その艶めかしさに、息を飲む。
マットは言った。
「俺も、メロ好きだったよ」
「え?」
「知らなかった?」
知るはずがなかった。
だって、あんなに世界に興味のない、とでも言いたげな目をしていたあのマットが。
「うそ、だろ?」
「うそだと思うの」
「わかんないよ」
「じゃあ、分かってよ」
もう一度唇に感じた熱は、好きだよと囁かれるよりも確かに、愛を示した。