デスノート

□ファーストコンタクト。
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メロに必死にお願いして、やっと仕事から解放してもらって出かけた街で、偶然見かけた。

夜神月。

キラ、なんだろう。

なんとなくだった。
俺の足は、そいつの方に向いていった。



「あいつが、」
Lを殺した。キラ、だ。
実際に確かな証拠は無かった。
けれど、Lが、ニアが、キラだと確信していた。それは確証になるだろう。
あいつは、夜神月はキラなのだ。

そのキラに俺が接触することは、良くは無いのだろう。けれど、俺の足は止まらない。
俺はそんなにキラに興味があったのだろうか。いいや、俺はこの事件をメロの要請があったから手伝っていただけ。ニアやメロみたいにキラに対しての執着というものは持っていなかった。はずなのに。
それならば、何故?
俺の歩は、確実に夜神月に向かって進む。


夜神月の近くによると、俺は演技力を発揮して、わざとその身体にぶつかる。もちろん怪しまれないよう、けれどよろけて立ち止まるくらいの、適度な強さで。
「あ、すいません」
「っいえ、大丈夫です。気にしないでください」
思った通り、ふらりとバランスを崩した夜神月は、手に持っていた荷物を地面に落とした。
俺はいかにも親切です、という雰囲気を醸し出しながら、その荷物を拾うと、手を差し出す。
「大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございます」
微笑んだその顔は、爽やかな美青年で。ほんとにこいつがキラなのだろうか、と思うくらい。
「いえ、俺がぶつかったんで。あ、これ……」
拾った荷物を渡すと、夜神月はもう一度微笑み、ありがとうございますと言った。

その言葉のあと、夜神月にじっと見られているのに気が付き、俺は首を傾けた。
「あの?」
「あっいえ、外国の方……ですよね」
「ああ、はい」
「日本人にない、目の色をされているな、と思って。綺麗ですね。つい、じっと見てしまいました」
照れたように笑う、夜神月。
そんなことを言われたのは、初めてだ。だからだろうか、何故だか急激に顔に熱が集まっていく感じ。

あっいや、これは――
「マズくない?」
「え、何か言いましたか?」
ぽそりと呟いた言葉が、夜神月に聞き返される。
「いえ、なんでも……」
そうは言ったけれど、俺の中じゃなんでもなくは無かった。

俺の興味をひく、目の前の夜神月という存在。
キラ、に対しては興味なんかなかった。なのに、今自分のこの目でみた夜神月という人間には、興味が湧いているのだ。

(これは、失敗した)

不用意に近づくんじゃなかったなあ、と俺は今更ながらこの行動を後悔していた。
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