BOYZ LOVE
□支配されないものもの 前編
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静かだった。別にいつもと同じ。青というか水色というか、はっきりしない空の下にオレがいるだけだった。
「あら」
「……どうも」
いきなり割り込んだ銀色。空を霞めて支配する。
唯一見えているおよそ顔の1/4がこの上忍のすべて、オレの視覚が捉えるすべてだ。
上忍はたけカカシ。
視界に銀髪が入ると無意識のうちに彼を凝視してしまう。理由は分からない。
ただそんな自分が気持ち悪い。
「休み?」
「あ、はい」
オレの横に何の抵抗もなく座る上忍。
彼がオレのように緊張する理由もない。彼からしたらオレはただの子供だ。
ああ何か話すことあるか?めん……
「めんどくせぇ」
籠もった声が耳に届く。何をいきなり。
「……でしょ?」
出かかっていた言葉を盗られた。
読まれた?いやまさか。
遠くの何かを見つめていた上忍はこちらを向いて微笑んだ。顔の筋肉が変に動く。笑うことなんてないのに。笑いたがってる。
「あ、忘れてた」
「は?」
「俺、報告書提出しに行くんだった」
じゃあなんでここに?と問う間合いもなく、彼は手をヒラヒラさせて行ってしまった。
さっきまでとなんら変わらない、オレ一人がここにいる。強いて言うなら、なんだかさっきよりどっかが痛い。
「あっシカマル!」
「おう」
あの場所から離れたかった。できれば空の見えないところに避難したい。
小走りで寄ってくる金髪の同期。カカシの担当する下忍の一人。
うずまきナルト。
「なんだ?今日休み?」
オレンジ色の服は所々汚れていた。
任務の帰りか。
「ああ」
うらやましいってばよ。と言うナルトは、声の調子とは裏腹にかなり疲れているようだった。
当たり障りないように対応して、オレは家に帰った。
ベットに横たわって瞼を閉じたら、頭の働きが勝手に活性化してオレ自身なのにオレを好きにさせない。
はたけカカシ……
気になる。あの銀色にオレだって。
支配されたい。
夜ってのは、やけに人肌恋しくなる。それはこの年頃の健康的な男子には堪え難いもので。
「くぅ……くっそォ……」
欲望が歩きだした。